老後のお金を考える【対策編~50代(後編)】

老後のお金を考えるシリーズ前回までの内容はこちら:

老後のお金を考える【基本編】

老後のお金を考える【対策編~30代、40代(前編)】

老後のお金を考える【対策編~30代、40代(後編)】

老後のお金を考える【対策編~50代(前編)】

「老後のお金を考えるシリーズ」完結編として、50代から運用で増やす手段を考えてみたいと思います。

なお、運用の前に働いて稼ぐ方法をご紹介したのは、運用だけをあてにすると相場の変動時に過度に不安になって、損失が出ている時に慌てて売却してしまったり、他に収入源がないために大きなリターンを出そうとして、リスクを取り過ぎてしまうことを防ぐためです。相場の変動にも動揺することなく長期投資を続けるためにも、収入の柱を複数持つことは重要です。

運用する

iDeCoで運用する

忙しくて何もしないまま50代になってしまった。今さらiDeCoで運用しても遅いだろうと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。50代からiDeCoを活用する方法を考えてみましょう。

50代からでは遅いと感じる原因のひとつは、運用期間があまり取れないことだと思いますが、iDeCoの受け取り開始年齢は69歳まで引き上げることが可能です。さらに一括受取ではなく年金形式で受け取ればその後も最長20年、残金は運用され続けますので、50代から始めても(最長で89歳まで!)長期で運用することも可能です。ただし、掛金を拠出できるのは60歳までとなりますので、運用元本を大きくするためには一刻も早く始めた方がよいでしょう。ただ、こちらについても、厚生労働省が納付を65歳まで延長する方向で検討しているとの報道がありますので、今後50代からのスタートでもある程度の運用元本を確保できる可能性が出てきました。掛金の上限が、お勤めの企業が導入している年金タイプによって変わってきますので、確認してみましょう。→iDeCo公式サイトのカンタン加入診断はこちら

現在の制度上は、国民年金の第2号被保険者(いわゆるサラリーマンや公務員の方)の方の拠出可能額は一番多くても毎月2.3万円(年間27.6万円)、拠出可能期間は60歳までですので、50歳から10年間限度額まで拠出しても運用元本が276万円にしかなりません。その点では20代、30代からスタートする方よりは不利ですが、掛金が全額非課税となりますので、税制メリットも考えると使わないのはもったいない制度と言えます。

メリット①掛金が全額非課税

実は、20代、30代に比べて、50代は年収も高くなっているため、掛金が全額所得控除になるメリットは大きいです。具体的な例で見てみましょう。

※(国民年金基金連合会『かんたん税制優遇シミュレーション』にて試算。住宅ローン控除の利用状況等、条件によって個人差がありますので、あくまでも概算となります。)。

このように同じ拠出額でも、年収によって所得税率が異なりますので、得られる税制メリットも異なります。収入(=税負担)が増えてきている50代だからこそiDeCoを使うメリットがあるとも言えます。

メリット②運用中の利益にかかる税金も非課税

また、iDeCoは運用益にかかる税金も非課税となります。

通常は、投資信託の運用などで得られた利益に対し、売却時に20.315%の税金が課されるのですが、これが、以下の図のように、iDeCoでは非課税となります。

毎月2.3万円を10年間、3%で運用した場合

このように全く同じ運用成果でも実際に手にする金額に差が出てきます。10年後に受け取らずに運用を続ければ、さらに非課税での運用は続きます。

また、iDeCoでは、運用期間中に資産配分を変更することができ、これをスイッチングと言いますが、このスイッチングの時に売却する資産の利益についても非課税となります。課税口座では以下の図のイメージのように課税されますので、スイッチングの度に資産が目減りしてしまいますが、iDeCoでは運用中の売却益も非課税となるため、課税を気にせずスイッチングが行えます。

課税口座でのスイッチング時の課税イメージ

運用額を大きくするために

前章で見てきたように、50代からでもiDeCoを使って運用するメリットは十分にあると言えますが、やはり一番のデメリットは、運用額に限度があることでしょう。これを補うためにとれる対策を考えてみましょう。

夫婦でiDeCoを利用する

自分だけでなく配偶者もiDeCoを利用することで運用額を大きくすることができます。

現在、第三号被保険者である専業主婦もiDeCoを利用でき、掛金の上限額も23,000円とサラリーマン並みとなっていますので、夫婦でそれぞれiDeCoを利用することも検討してみましょう。ただし、税金を納めていない専業主婦ですと税制優遇メリットはありませんので、その点は注意が必要です。

つみたてNISAを組み合わせる

同じく非課税で運用できるつみたてNISAを組み合わせて運用するという方法もあります。つみたてNISAは、長期・積立・分散投資を支援するために、投資対象商品なども厳選された制度です。こちらは投資可能額は年間40万円、非課税で投資できる期間は最長20年となっています。

勤め先に企業型確定拠出年金制度があってiDeCoに加入できない方は、企業型では投資できない資産につみたてNISAで投資して、全体のバランスを取るという使い方もできます。

50代からの運用で気をつけること

最後に、50代からの運用で注意したい点をお伝えしたいと思います。

受け取り時期を遅くすることで運用期間を長くできるとお伝えしましたが、あまり高齢になってから受け取っても仕方ないと考える方も多いと思います。そうなるとやはり運用期間が短くなってしまい、リーマンショックレベルの相場の波乱などがあった場合、受け取りたい時期に元本割れすることも考えられます。

対策としては、

  • 受け取り時期に余裕を持つ:当初受取を予定していた時期に元本割れしている場合でも受け取り時期を延期することができるよう、その時に必ず使う予定のある資金は預貯金や国債などの安全資産に置いておくようにしましょう。
  • リスクを抑えた運用をする:定年まで30年、40年と運用できる世代と比べると大きなリスクは取りづらいので、ハイリスクハイリターンを狙わず、リスクを抑えた運用を心がけましょう。どうしてもリスクを取りたい場合は別に金額を決めて、余裕資金で挑戦すると良いでしょう。

 

まとめ

5回にわたって「老後のお金を考える」シリーズをお届けしてきましたがいかがでしたか?

どの世代でも大切なポイントは

  • 目標を持つこと
  • 収入の柱を増やすこと

そして、運用に関しては、

  • 自分の現状を知ること
  • 制度をよく知ること

も重要です。

本コラムが、不安ばかりではなく楽しみに老後を迎える一助になれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。