前回コラム「分散投資の方法③積立投資で時間分散」で、積立投資の効果を見てきました。

分散投資の方法第4回では、積立投資のデメリットを見ていきたいと思います。
万能に見える積立投資にもデメリットはあるのでしょうか?!

 

積立投資のデメリット

積立投資のデメリットと考えられるものとして次の4つがあります。

  • 上がり続ける相場では、一括買付の方が資産が増える
  • 下がり続けるマーケットでは意味がない⇒投資対象を見極める必要がある
  • 時間がかかる
  • 「絶対」損をしないわけではない

 

はじめに:コア・サテライトという考え方

積立投資のデメリットを見ていく前に、資産をコア部分とサテライト部分に分けて考えるコア・サテライト戦略(コア・サテライト投資法などとも言われます)についてお話ししたいと思います。

個人資産における「コア」とは文字通り「中核」となる資産のことで、老後の生活資金であったり、住宅取得のための資金や教育費の準備など、生活に必要な基本的資産というイメージです。こういった資産は計画的に安定的な運用でじっくりと育てていく必要があります。

これに対し「サテライト」とは、コアの周囲を取り巻く「衛星」を意味し、資産運用においては、積極的に「コア」部分より高いリターンを取りに行く運用のことを言います。個人の資産運用においては、生活に必要な資金は確保したうえで「さらに豊かな暮らしをするための運用」と捉えていくのが良いと思います。ハイリスクハイリターンの投資になることが多いと思いますので、こちらは余裕資金の運用方法として考えるのがよいでしょう。

コア・サテライト戦略は年金基金などでも活用される手法で、当社HPでも解説しています。

この後、積立投資のデメリットを見ていきますが、そのデメリットの多くが、「サテライト」運用におけるデメリットになるかと思います。「コア」の運用においてメリットとなる要素が「サテライト」の運用ではデメリットになることがあります。ご自分の資産やその運用手法を考えるとき、明確に「コア」と「サテライト」に分けて考えることが重要であると考え、最初にコア・サテライト戦略をご紹介しました。

では、積立投資のデメリットについて、一つずつ見ていきましょう。

上がり続ける相場では、一括買付の方が資産が増える

前回、ドル・コスト平均法により平均買付価格を下げることができるとお伝えしましたが、これは上がったり下がったりしている資産について効果を発揮する方法ですので、相場が右肩上がりに一直線に上昇し続ける場合には、当初一括購入した方が、当然資産は増えることになります。短期的に考えれば、上昇が見込める資産を一括で購入し、上昇したところを売却する方が良い場合もあるでしょう。つまり、短期的に上昇していく相場に対し、積立投資はデメリットになることもあるということです。ただ、長期投資の場合で考えると、歴史的に見ても、株式市場は上昇と下落を繰り返しながら推移しており、一直線に上昇することはありえませんので、長期でじっくり資産形成をしたい「コア」の資産については、やはり積立投資は有効といえます。「サテライト」部分の運用で、相場を読んで、タイミングよく売買をして利益を出したいのであれば、積立投資は適さないということです。

下がり続けるマーケットでは意味がない⇒投資対象を見極める必要がある

逆に、下がり続ける資産に投資をしてしまった場合、いくら積立投資をしても資産を増やすことは難しくなります。下がり続けていく資産を定期的に買い付ける行為はいわゆる株の「ナンピン買い」と同じで、株価が上がってこないことには報われることはありません。つまり、上昇や下落を繰り返しながらも、長期的には上昇していくマーケットであることが積立投資をする大前提であり、上昇していくマーケットを「当てに行く(外す可能性がある)」ことを避けるために資産分散を組み合わせて行くことが必要なのです。

その意味では、るいとう(=株式累積投資:毎月定額で一つの株式を購入していく投資方法)などはドル・コスト平均法を活用した積立投資ではありますが、一つの銘柄に集中投資するため、資産分散の効果はなく(時間分散の効果はあります)、その銘柄の将来性に期待するからこその投資と言えます。るいとうは、投資法としては「コア」の資産向けの方法ですが、投資対象としては株の個別銘柄ということで「サテライト」的投資対象であり、(倒産リスクなど)リスクがやや高くなりますので、運用資産が多くない方は「サテライト」部分の運用と考え、少額にとどめるのが良いでしょう。

時間がかかる

積立投資は長期の資産形成に向く手法であり、すぐに成果が出るとは限りません。ですから、近々使う予定のある資金や、高齢で、年齢的に長く運用できないケースには向かないというデメリットがあります。時間をかけて運用できる性格の資金かどうかをよく確かめて投資するようにしましょう。

余談ですが、独立系投信会社のコモンズ投信でつみたて投資をされている最高齢のお客様は90代とのことで、投資目的は「将来のため」だそうです。

「絶対」損をしないわけではない

最後に、ドル・コスト平均法による積立投資が有効であるとはいえ、変動する資産に投資する以上、絶対に損をしないわけではないことをお伝えしておきます。特に、短期間での成果だけを切り取ってみた場合、損失が出る確率は高くなります。

逆に投資期間を長くしていくほど、損失の出る確率が低くなるというデータも多く出ています。以下はその一例です。

(出所:J.P.Morgan Asset Management 「Guide to the Markets Japan | 2Q 2019 | As of March31, 2019」より抜粋)

運用期間1年では先進国株式(以下「株式」)、先進国国債(同「国債」)、先進国株式50%+先進国国債50%(同「分散」)いずれの資産クラスでもマイナスになるケースがありますが、10年の運用期間を取ると「国債」・「分散」ではリターンがすべてプラスに、20年運用した場合には、いずれの資産クラスでもリターンがプラスになるという結果が出ています。

投資の世界に「絶対」はありませんが、これらデータを見る限り、長期にわたって分散投資をしていくことで、損失の出る確率をきわめて低くしていくことはできるのではないでしょうか。

 

積立投資のデメリット まとめ

  • 上がり続ける相場では、一括買付の方が資産が増える
  • 下がり続けるマーケットでは意味がない⇒投資対象を見極める必要がある
  • 時間がかかる
  • 「絶対」損をしないわけではない

積立投資は、時間をかけてじっくり育てていく「コア」の運用に適した投資手法です。投資しようと思っている資金の性格が「コア」部分なのか「サテライト」部分なのかを見極めて、効果的に積立投資をしていきましょう。