2021年、NYダウやナスダック指数が2020年3月のコロナショックを経て史上最高値を更新する中で、一部の投資家で話題となっていた商品がありました。

「EB債」です。

今回はEB債についての商品性やリスク、メリットやデメリット、投資対象としてアリかナシかをご紹介していきたいと思います。

EB債=Exchangeable Bond(他社株転換社債)とは

国債や地方債や社債などと同じ「債券」に属しますが、デリバティブ(金融派生商品)を組み込んでおり、「仕組債」と呼ばれます。
EB債はある一定の条件(後述するノックイン事由)に該当しなければ大きなリターンを得ることができる一方、ノックイン事由が発生すると大きな損失が発生するリスクがあります。
EB債の仕組みを正確に理解するのは経験豊富な投資家でも難しく、証券会社のセールスパーソンも完璧に理解している方は少ないかもしれません。
EB債について、具体的に特徴やメリット・デメリットを見ていきましょう。

EB債の特徴

ノックイン

国債や一般的に流通している社債との大きな違いが「ノックイン」です。
EB債の仕組みを理解するうえで「ノックイン」を理解することが重要です。

「ノックイン」=あらかじめ決めておいた価格以下となること

当初の株価(=行使価格)が1500円のA社株を対象とするEB債を組成するケースで考えてみます。当初株価を前提に、あらかじめノックイン価格(ここでは、仮に1000円とします。)を設定します。
満期が1年のEB債を購入したとすると、満期までの期間にA社の株価終値が1日でも1000円未満になると「ノックイン事由発生」となります。
「ノックイン事由が発生」すると、元本割れのリスクが大きくなります。
ノックイン事由が発生して、その後もA社株価が一定水準以下に低迷したまま満期を迎えると他社の株式で償還され、投資元本が割れた状態での満期償還となります。

【図1】EB債のイメージ(出所:BIG TREE作成)

EB債のメリットとデメリット

メリット

  • 国債や一般的な社債に比べると相対的に高い利率が設定されている
  • 株式への投資とは異なり、一定の水準までは転換対象銘柄の株価が下落しても元本割れリスクがない
  • 一定以上の金額を投資するのであれば、オーダーメイドでスキーム(仕組み)を柔軟に設定できる

デメリット

  • 様々なリスクがある(まとめて後述)
  • 手数料が見えない(重要情報シートによって一部開示される方向も)
  • 商品性が複雑

 

EB債のリスク

EB債は高い利回りが期待できる一方で、様々なリスクがあります。
ローリスク・ハイリターンの金融商品はありません。EB債はハイリスク・ハイリターンの金融商品です。
主に以下のようなリスクがありますので、事前に確認しておきましょう。

【ノックインリスク】

先述した「ノックイン事由が発生」する状態を指します。
転換対象銘柄が一定水準以下に下落してしまい、低迷したまま満期を迎えると投資元本割れとなる可能性が高くなります。

【信用リスク】

国債や社債などと同様に「発行体の信用リスク」があります。
信用リスクとは倒産やデフォルトを起こすリスクのことです。
転換対象銘柄の信用リスクとは別モノであり、EB債に関しては一般的な社債と異なり信用リスクが2社以上(発行体の信用リスク+転換対象銘柄の信用リスク)になることとなります。

【価格変動リスク】

EB債はデリバティブを組み込んでいるため、転換対象銘柄の値動きによってEB債の価格も常に変動します。
転換対象銘柄の株価が下落し、特に「ノックイン事由が発生」したEB債については価格が大きく値下がりしている可能性があります。
しかし、多くの証券会社ではEB債の時価評価を明示している会社は少ないように感じています。

【流動性リスク】

EB債は多くの証券会社では、原則として途中売却ができません。途中売却ができるとしても投資元本よりも目減りした『元本割れ』状態での途中売却になるケースがほとんどです。途中売却は出来ないものとして検討すべき商品です。

【早期償還リスク】

早期償還条項という条件を付けると満期日よりも早く償還される場合があります。
例えば、年利10%(税引前)の1年満期のEB債が半年で早期償還した場合、受け取れる金利は5%(税引前)となり、満期まで保有できた場合の半分の金利となります。
当初予定していた満期保有までの金利が受け取ることができないリスクとなります。

【クーポン減少リスク】

EB債の中には『デジタルクーポンタイプ』という商品があります。
クーポン(利子)の利率も転換対象銘柄の株価で決まるタイプのEB債で、当初定めた一定の水準以下に株価が下落してしまうとクーポンが年利0.1%(税引前)などゼロに近い水準となってしまうタイプの商品が多いです。

EB債への投資はアリかナシか!?

EB債への投資判断については、最終的には投資家のリスク許容度によります。
これまで述べてきたように、一般的な社債や国債よりも大きなリターンを狙うことができます。
一方、【EB債のリスク】で述べたように多くのリスクも内包しております。
EB債はリスク許容度や設定条件をオーダーメイドでアレンジすることで、無限ともいえるバリエーションの商品を組成することが可能です。
もし担当者からEB債を提案された時には以下の用語をしっかりと説明できるかどうかをご確認ください。
いずれもEB債を組成するにあたっての基礎的な知識となります。

  • ノックインとノックアウトの違い
  • アメリカンタイプとヨーロピアンタイプの違い
  • 割増償還
  • クーポントリガー
  • デジタルクーポン
  • 複数銘柄参照時のワーストパフォーマンス
  • ステップダウン

まとめ

EB債についてご紹介してきましたが、いかがでしたか?「債券」と言えば安定資産に分類されるわけですが、EB債はその一般的なイメージとはかけ離れたリスクを持つ商品です。にもかかわらず、残念ながら積極的に販売されている実態があるようです。金融庁もこうした状況を問題視し、監視を強めていますが、投資家側も理解できない商品には投資をしないという姿勢で臨むべきでしょう。実際、EB債投資が「アリ」と思われるケースは非常に少なく、多くの投資家にとってEB債投資は「ナシ」となるのではないでしょうか。
最後に、筆者が新人の頃に教えられた、EB債を一言で表した言葉を紹介します。

『利益限定、損失無限大の商品』

実際には『損失無限大』という表現は正しくなく、最大損失=投資元本、ということになります(つまり、ゼロになる可能性がある)。
メリット・デメリット、そしてリスクをよく理解し、EB債への投資判断の際にご参考にしていただければ幸いです。

弊社でもご相談を承っております。EB債への投資を検討されている方、すでにEB債へ投資をされている方、弊社の経験豊富なIFAにご相談いただけますと幸いです。

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