米国の独立アドバイザーの現状について、金融庁の金融審議会「市場ワーキンググループ」(第13回)議事録(資料4沼田参考人提出資料「日米独立アドバイザーの現状と課題」)を参考にご紹介させていただきます。

日本と比べて、いわばIFA先進国と言える米国の現状から、日本においても認知度が高まってきたIFAの将来像について思いを巡らせる一助になれば幸いです。

 

1.米国の独立アドバイザーについて

  • 人数では、大手証券を上回る勢力になっている。
  • 独立の度合いは様々。
  • 独立した法人として営業していても、証券外務員型であれば証券会社の監督を受け、日本の金融商品仲介業者(IFA)に近い形態になっている。
  • 投資顧問型は、証券外務員資格がなく、一任の取引を行う。取引連動型のコミッションは受け取らず、回転売買のインセンティブがないことを売りにしている。日本の投資顧問業とは様子が異なる。
  • 兼業型も存在。
  • いずれのアドバイザーも、商品と情報技術ツールは証券会社から提供を受けている。
  • 多様な営業支援を金融機関、協会、アドバイザー向けの専業業者から受けている。
  • 主な支援は営業、経営、コンプライアンス、ITツール支援等。
  • その中から、必要な支援だけを選び、営業固定費を抑えることが可能になっている。

 

2.米国の独立アドバイザーが創業期を乗り越えた理由

  • 資産形成層が市場に参入し、最高級というよりは身近な対面アドバイスを求めるようになった。
  • 手数料の大半を自分で受取ることができ、正社員時代ほど稼がなくても生活が成り立つ。
  • 転勤などがなく、顧客とともに独立して長期につき合っていくということができる。
  • 営業の自由度が高く、兼業が行いやすく、投資サービスのみで生計を立てる必要がない。

 

3. 米国の独立アドバイザーの付加価値

  • 顧客本位の業務運営が行いやすい形態であり、系列商品に縛られない中立的なアドバイスが提供でき、地域に根差すことが不可欠で、周りの目がモニタリング機能を果たしている。兼業がしやすいことから顧客の資産全体を俯瞰したアドバイスというものが提供でき、営業の自由度も高く、顧客のニーズに合わせたアドバイスの取捨選択ができる。
  • アドバイスの地産地消ができる。従来の証券会社が出店できないようなところにも出ていくことができ、地域で頼られる存在になりえる。相続などを通じて、世代を超えたアドバイスというものを提供していくことも可能で、そのために地域の士業、税理士、弁護士と連携し、顧客を紹介しあうこともできる。
  • 投資顧問型のアドバイザーであれば、残高連動の手数料をアドバイスの対価として受け取ることができ、商品取引に結びつかない取引の対価も得られるようになっている。
  • 例えば複数の税制優遇制度がある中で、どの口座に幾らずつ、どの資産でどの順番で投資をすべきか、というような資産の置き場所に関するアセットロケーションというアドバイスがある。その逆、ある程度税制優遇口座に積みあがった資産を、どの順番で、どのように引き出していくかという引き出し戦略というアドバイスもある。投資行動のコーチングというのもあり、市況が大きく動いた際に、パニック売りを諫めるようなタイプのアドバイスを指す。米国では、アドバイザーがITバブル、それから金融危機といったような時期に、こうした投資コーチングと言えるようなアドバイスを提供したからこそ、投資家は混乱期を乗り越えられたというふうに感じているようである。これが現在の信頼関係につながっている。こうしたアドバイスは、実際にパフォーマンスを押し上げる力があるということもわかりつつある。
  • 米国では投資商品の手数料が相対的に低下していると言われており、これは運用にかかわる手数料ということで、運用だけということであれば、ロボ・アドバイザーで済むかもしれないが、人間はほかにもファインナンシャルプラン、相続対策ということも行っている。これらも機械によるシミュレーションはできるが、機械の答えは出たとしても、私は実際にはこうしたいというような顧客の意を酌みとって微調整を加えなければ、満足のいくアドバイスにはならない。こういった商品取引に直接結びつかないようなアドバイス、これをやってくれるのであれば、その対価は払っても惜しくはないと考える投資家が増えている。

 

4. 米国の独立アドバイザーのコンプライアンス

  • 独立して営業していると、監督の目が行き届かないというような懸念もあるが、実際米国の検査で指摘された事例の大半というのは、オペレーションの不備といえる。

 

5.まとめ

本レポートから、大手証券会社が富裕層・大企業特化にシフトしていく中で、独立アドバイザーに移ってきた資産形成層に対し、地域密着で、顧客本位の業務運営を行い、ITバブル崩壊や金融危機を乗り越える中で、徐々にその地位を獲得してきた米国IFAの姿が見えてきました。自助努力による老後資金準備が求められているわが国でも、今後同じようなプロセスでIFAによるアドバイスが求められていく時代が来るのではないでしょうか。