前回、集中投資で相場を当て続けることの難しさをお伝えしました。「相場を当てなくても良い」ということのほかにも分散投資のメリットがあります。

上下のブレを少なくすることのメリット

一つの資産に集中して投資するよりも、多くの資産に分散投資した方が上下のブレを抑えることができます。上下のブレを抑えることでどのようなメリットが考えられるでしょうか?

リスク許容度の範囲内に収まりやすい

リスク許容度とは簡単に言うと、精神的にどのくらいの下落に耐えられるかの度合いのことです。投資経験や保有資産、性格などによってリスク許容度は変わってきますが、リスク許容度以上に資産価値が下落すると投資がストレスになってきます。そうなると後々上がる資産であっても売却してしまったり、心配で本業が手につかず、夜も眠れなくなったりするでしょう。例えばリーマンショックの際、新興国株式は約6割の下落となりました。1000万円の資産が400万円になっても平常心でいられる人は少ないでしょう。しかし、そこで売らずに保有していれば、翌年にはなんと8割超のリターンを得られるわけです。投資で最も重要なのは「続けること」ですから、分散投資で上下のブレを少なくすることで、長く投資を続けられる可能性が高まります。

資産が増えやすい

上下に大きくブレる資産を持っていると、上がる時は大きく上がりますが、下がる時は大きく下がります。実は、このような動きをすると、資産は増えづらいのです。具体的な例で見てみましょう。

<50%の上昇と40%の下落を繰り返す資産A>と<10%の上昇と5%の下落を繰り返す資産B>という二つの資産があると仮定します。この二つの資産をそれぞれ10年間運用した場合、どちらの資産の方が増えるでしょう?平均リターンは資産Aの方が5%、資産Bは3%です。

結果は以下の図の通りです

◆資産A

※当初の資産を100として計算、小数点以下は計算には含めますが非表示、手数料・税金等は考慮していません。以下の表についても同じ。

◆資産B

もしかすると、資産Aの方が増えるのかな?と思った方も、これほどまでの差がつくとは思わなかったのではないでしょうか?

現実にこのような動きをする資産はないかと思いますが、理論上大きな上下を繰り返すと、上がったときの単年のリターンは大きく見えても、資産は大きく目減りするということです。

さらに、以下の図のように、リターンをもう少し大きく(70%の上昇と40%の下落を繰り返す)設定してみても、まだ資産Bの最終リターンには勝てません。平均リターンでは大きく上回っているにも関わらずです。

つまり、上昇を大きくすることよりも、下落を小さく抑えることの方が投資においては重要なのです。

もうお気づきかもしれませんが、同じ平均リターンであれば、下落が少ないほど最終リターンは大きくなりますので、一番資産が増えるのは、毎年安定してプラスのリターンを出す以下のようなパターンです。

しかしながら、現在ノーリスクで3%や5%のリターンを出せる金融商品は存在しません(過去には銀行に預けておけば10年で2倍になった時期もありましたが…)。資産を運用して増やしていくために、私たちはリスクを取って運用する必要がありますし、値動きのある資産に投資するからにはマイナスリターンになる年も必ずあります。

マイナスを怖れて投資を諦めるのではなく、資産分散によりリスクをコントロールしてリターンを出していくのが賢い投資家と言えるでしょう。

次回は資産をどのように分散するかを考えていきます。