「コロナ禍の中で401kおよびIRAミリオネアの数が過去最高を記録」
“The number of 401(k) and IRA millionaires reach record high amid pandemic”
2020年11月13日付の米Yahoo Financeにこのような記事が掲載されていました。
先日、『日本で「貯蓄から投資へ」が進まない理由』シリーズで、英米で進む制度事情を見てきましたが、その中でも登場した米国の401(k)とIRA。少し復習しますと、401(k)は日本版401kのモデルとなった企業型確定拠出年金(DC)、IRAはiDeCoに近い個人型DCのことでした。

【参考】日本で貯蓄から投資へが進まない理由(3)

この401(k)とIRA口座でのミリオネアが過去最高を記録したというのです。ミリオネアというのは、100万米ドル、日本円でおよそ1億円を持つ人のことを指し、日本で言うところの億万長者のような意味です。

記事の中身を少し見てみましょう。

7-9月期にミリオネアが過去最高を記録

※米国の決算期は日本と違い、1-3月が第1四半期となりますので、分かりやすくするために第3四半期を7-9月期と表記しています。

記事によると、米Fidelityの3,000万以上の口座を分析したところ、「いわゆる401(k)ミリオネア(筆者補足:401(k)で100万ドル以上の残高を持つ人のことをこう呼んでいるようです。)の数が、第2四半期の224,000口座から262,000口座17%増加した」とのことです。「IRAミリオネアも同様に第2四半期の204,000口座から234,000口座15%増加した。これまでの最高は、いずれも2019年第4四半期の233,000口座(401(k))、208,000口座(IRA)だった。」と記事は伝えています。
また、「当該口座数の増加がみられた7,8,9月は、1,400万の米国人が失業申請を行っていた時期である。同じ時期にS&P500種指数は8.1%増加している。」と、実態経済と株式市場の乖離についても言及しています。失業率が上がり、収入の不安がある中でも、資産が増えていれば、不安も少し和らぐのではないでしょうか。自分が働いて稼ぐ以外に、お金を働かせることで収入の柱を増やしておくことの効果が表れていると言えます。

退職口座全体平均でも増える残高

残高の増加は一部の億万長者だけの話ではなく、退職した投資家全体の平均残高にも増加がみられます。「IRA口座全体平均は、第2四半期からで6%増117,700ドル(約1,235万円※)、1年前と比べると7%の増加」となり、401(k)も少し小幅ではあるものの、「第2四半期から5%増109,600ドル(約1,150万円※)、1年前と比較すると4%の増加」となっているようです。

退職投資家全体が、相場上昇の恩恵を受けていることが分かります。
※1ドル=105円で計算

投資家の動向

また、記事では、「10人中9人の投資家は、この前例のない環境においても、退職口座への拠出割合を変えていない」ことを伝え、「多くの組織とその従業員がコロナ禍による試練に直面する状況の中、四半期にわたって平均口座残高がわずかでも上昇したこと、多くの投資家が貯蓄を継続したことに勇気づけられる」とのFidelity Investmentsの職域投資担当役員のコメントを紹介しています。

株式の比率を高めるベビーブーマー世代

さらに、同調査では以下のようなことが明らかになったとしています。

  • ベビーブーマー世代の38%が年齢の割には株式への投資比率が高い(しかし、そのおかげで、彼らは直近の相場上昇の恩恵を受けている)
  • 株式に100%投資している人も12人に1人いる。
  • 一方、感染拡大の中で、より保守的な投資配分に変更したベビーブーマーも3分の1存在する。
  • 所得の高い層ほど株式に多く投資する傾向が見られた。

米国のベビーブーマー世代とは、戦後の1946~64年頃に生まれた概ね56~74歳辺りの世代を指します。米国では、世代ごとの分類がよく行われており、ベビーブーマー世代、ジェネレーションX、ミレニアル世代、ポストミレニアル世代などが存在します。日本でも団塊の世代、団塊ジュニア世代などと分類することがありますが、米国では日本よりもより世代を意識しているイメージがあります。世代ごとに投資行動なども異なるとされており、本コラムでもいずれ取り上げてみたいと思います。

当該記事の最後には、Fort Pit Capital Group(ファイナンシャル・アドバイザー/資産管理会社)のファイナンシャル・アドバイザーであるEmily Franco氏の以下のようなコメントが掲載されています。「(ミリオネアは)当然所得の高い人ほど達成しやすい目標ではありますが、だからといって所得がそれほど多くない人には達成できない目標というわけではありません。年間の拠出額を最大化し、相場の下落時にも投資を継続することで、自分の老後だけでなく、次世代に残すのにも十分な退職資金を確保する可能性が高まります。」

これから資産形成を行っていく私たち日本人にとっても、勇気づけられる言葉ですね。

今回、Franco氏は、”stay invested”(投資を継続する)という表現をしていますが、投資の世界において、同じ意味で”stay in the market”(マーケットにい続ける)ともよく言われます。波乱相場で株価が暴落するような時でも、狼狽して投資をやめたりせず、淡々と”stay in the market”を貫ければ、誰にでもミリオネアになれる可能性が開けてくるでしょう。

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