ロボアドバイザーやファンドラップなど、「おまかせ」の運用手段が増えてきています。また、IFAという金融アドバイザーの存在も認知され始めています。金融リテラシーが大切だ、若いうちから金融リテラシーを身につけなければ、と声高に言われてはいますが、こうしたサービスやアドバイザーを使って運用を「おまかせ」にすれば、金融リテラシーを身につける必要もないのではないか、と考える人もいるかもしれません。特に苦手意識がある方はできれば避けて通りたいところでしょう。しかし、そうしたサービスを使う場合であっても金融リテラシーが不要というわけではありません。

今回は、金融リテラシーを身につける3つの目的というテーマでお話していきたいと思います。

①良いサービス・良いアドバイザーを「見つける」ため

何か良いサービスやアドバイザーを活用して運用を任せたいと考えたとします。しかし、そうしたサービスやアドバイザーをどうやって探すのでしょうか?

そもそも言葉が通じない

「リテラシー」とは元々「読み書きの能力、識字能力」という意味ですが、大前提として、基本的な知識が全くないと商品やサービスの説明が理解できない、という状態に陥ります。例えば、本当に投資未経験、という方の中には「債券」と言われた時に、よく分からないという方は少なくありません(「債権」と混同していることは良くあります)。そのような方に、株と債券で分散投資を…と説明してもきちんとは理解できないでしょう。投資を始めようと思ったら、最低限の知識は必要になります。インターネットで調べればいくらでも情報は得られますし、初心者向けの投資の入門書を一冊読む程度でも十分です。初心者向けのセミナー等もあちこちで開催されているので参加してみるのも良いでしょう。

アドバイザーを見つける場合

たとえば、IFAなどのアドバイザーを利用したい場合、お金や投資に対する最低限の知識がないと、そのアドバイザーが良いアドバイザーであるか見極めることができません。例えば、難しい投資用語を並べるだけのアドバイザーを「(自分には)よく分からないけど、詳しそう」と思ってしまうこともあるかもしれませんが、ある程度の知識があれば、「なんだか言っていることがおかしいな」と分かったりするわけです。専門家のような高度な知識を持っている必要はありませんが、専門家が話している内容を理解できる程度には知識を持っておきたいものです。

極端な例ですが、投資詐欺などに遭うケースを考えてみましょう。人は5%のリターン、と言われると、「高すぎる」と怪しむのに、なぜか「元本保証で年利20%」などと言われて飛びついてしまうことがあります。高いリターンには高いリスクが伴うということは投資の基本であり、ローリスクハイリターンの投資など存在しないことは少し勉強すれば分かることです。金融リテラシーが身についていればこうした詐欺被害にも遭いづらくなります。

商品・サービスを見つける場合

ロボアドバイザーやファンドラップ等のおまかせサービスを選ぶ場合にも、金融リテラシーがあれば、サービスや運用の内容、コスト等を比較することができます。重要なことが小さい文字で難しい言葉で書いてあることも少なくありません。そうしたものを避けて通ると、結局自分は何に投資をしてどれくらいのコストをかけているのか、分からないままになる可能性があります。ましてや、それが優れたサービスであるとどうして判断できるでしょうか。これはアドバイザーの場合にも言えることですが、契約や投資の最初の段階でよく考えて深く理解すればするほど、相場が変動した時でも自信をもって乗り越え、長く付き合っていくことができるのです。

情報の取捨選択をする場合

それから、無料の情報を選び取る際にも金融リテラシーが必要になります。最近ではYouTubeなどで投資情報を発信する人も増えています。そういった動画を見ていると、この人はあまりよく分かっていないな、と思うこともあります。逆に、高度な鋭いコメントにも的確に答えていて、この人はかなりしっかりした知識を持っていそうだな、と思うこともあります。YouTubeの情報発信は無資格でもできてしまいますし、何の責任も伴いませんので、注意を惹きたいだけのいい加減なものもたくさんあります。ある程度の金融リテラシーがあれば、そうした情報の中から役立つ情報を選び取ることもできるのです。

②良いサービス・良いアドバイザーを「活用する」ため

では、良いサービスや良いアドバイザーを見つけたら、今度こそ「あとはおまかせ」でよいのでしょうか?ここでも「おまかせ」や「ほったらかし」はお勧めできません。

アドバイザーを使う場合

例えばアドバイザーを使う場合を考えてみましょう。アドバイザーから定期的に報告を受けることもあれば、不定期に運用方針の変更や新しい商品の購入を勧められることもあるでしょう。勧められた商品は本当に良いものなのか、毎回きちんと話を聞いて判断してください。「良いアドバイザーに任せているのだから、信じてお願いすればいいのでは?」と思うかもしれませんが、そうではありません。それはアドバイザーを疑ってかかるということではなく、自分がその商品の内容やリスクをきちんと理解できるか、アドバイザーは自分に合うと思って勧めてくれているだろうが、自分としてもそう思えるかをきちんと判断してほしいのです。その結果、毎回良い提案だと思えればそのアドバイザーへの信頼はさらに増すでしょう。もしも自分の考えと少し違うと感じるなら、そう伝えることで相互理解が深まります。そのような積み重ねにより信頼関係が構築されていくでしょう。「信じて任せる」は一見信頼しているようですが、実は本当の信頼関係はできておらず、いざ暴落や調整で運用がうまく行かなくなった時になって「騙された、聞いていない」となる可能性が非常に高いのです(今はコンプライアンスが非常に厳しいので、説明していないということはないはずなのですが…)。

忙しいからノータッチではなく、時間のかかるマーケットの日々の動向ウォッチや分析、頻繁に行われる制度改正の把握などをプロに任せ、必要に応じて自分に関係のある情報だけを入れてもらう、というのが理想的かつスマートな使い方です。はじめは入門書レベルだった金融リテラシーも、アドバイザーと会話する中で確実に向上していくはずです。お客様のリテラシー向上はアドバイザーの大切な役目の一つでもあるのです。

おまかせサービスを使う場合

ロボアドバイザーなどのサービスを活用する人も増えています。「ほったらかし」で楽に運用できる、と感じている方も多いかもしれません。毎日値動きを気にする必要はありませんが、ここでもほったらかしは良くありません。今は相場が良いので、「あんまりよく分かっていないけど、増えているみたいだから大丈夫だろう」という人は実はかなり多いのではないかと思います。では、逆に減っているようだと気づいた時、どうなるでしょうか?そういう状態の投資家の多くは、下がってきた時に怖くなってやめてしまいます。全額引き出さないまでも、新規の積み立てを止めてしまったりするのです。後になるとそうした時期が一番の「買い場」だったりするのですが・・・。ロボアドバイザーには人間の担当者が付かない代わりに、大きな価格変動等があった際にはこまめに情報発信が行われます。そうした情報をきちんと確認し、説明は納得できるものであるかを自分で判断する必要があります。同じようなサービス、商品でも、運用内容によっては成績にかなり違いが出ることがありますので、アドバイザーと同様、自分の投資について定期的に確認することが大切です。評価額が下がってきた段階で自分での運用に限界を感じ、IFA等対面のアドバイザーの助言を求めて駆け込む事例も実はよく見られます。

③暴落を乗り越えて投資を続けるため

暴落の時にこそ、最も金融リテラシーが必要になります。投資に失敗する最大の要因は「途中でやめてしまうこと」です。歴史上大きな暴落は何度も起きていますが、直近ですとリーマン・ショック級の下落が起きた場合、多くの人はパニックになったり疑心暗鬼になったり、絶望的な気持ちになって、投資をやめたいと強く思うようになります。そんな時、知識として次のようなことを知っているだけでも投資を続けられる可能性は高くなります。

・下落時は弱気になって売りたくなるものである
・過去にも同様の下落は何度も起きている
・下落時に投資を続けた人が大きなリターンを手にしている

本コラムでも過去の下落相場について紹介していますが、こうした大きな下落相場の中で必ず戻ると信じるには知識や深い理解が欠かせません。
⇒【参考】「いつか来る下落相場を乗り越える方法~コロナショックと過去のショックを比較!」

逆に現在のように順調な相場が長く続いているような環境では金融リテラシーはあまり必要ありません。正確には、金融リテラシーが低くても影響が顕在化しないということです。しかし、人は、相場が良い時に投資を増やし(または投資を始め)、相場が悪い時に投資を減らす(または止める)傾向があります。今やみくもにリスク資産への投資を増やしている人は、自分のリスク許容度に対して、見合った投資となっているでしょうか。良い相場の時にリスクを多く取ってしまうことは、暴落時に投資をやめるのと同じような投資行動と言えます。金融リテラシーがあれば、そうした客観的な視点で自己分析を行うこともできます。

アドバイザーを使う場合でも…

暴落時こそ投資を続けるよう励まし寄り添うのがアドバイザーの重要な役割なのですが、パニック時には前項に挙げたような基本的な金融リテラシーがないと正しいアドバイスも届かなくなります。逆に、そうした知識があれば、平静さを取り戻しやすくなるのです。また、普段から信頼関係を構築できているアドバイザーとなら、大きな下落や長期の調整も乗り切れる可能性がさらに高くなります。

まとめ

金融リテラシーを身につける3つの目的についてお話してきましたが、いかがでしたか?誰しも楽をしてお金が増やせたら嬉しいものですが、完全にほったらかしにしてお金が増えるほど投資は楽ではありません。ノーチェックでお金を預けてくれるお客様を「良いお客様」と歓迎する業者もあるかもしれませんが、本当に良心的な業者はお客様が金融リテラシーを身につけた「賢い投資家」であることを望んでいます。繰り返しになりますが、プロ顔負けの高度な知識を身につける必要はないのです。まずは基礎的なところから金融リテラシーを身につけていきましょう。

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