当コラムでは、分散投資の方法シリーズなどで、これまでにも資産ごとの相関関係について触れてきました。ところが、3月のいわゆるコロナショックによる世界同時株安局面では、株式だけでなく、債券や金までもが暴落しました。投資家は現金化を急ぎ、売れるものは何でも売るというパニック状態になったのです。
この状況を見て、株式と債券は逆相関と言われていたのに…結局、分散投資など意味がないのでは?と思った方も多かったのではないでしょうか。

今回はあらためて、資産クラス間の相関について検証してみたいと思います。

 

パニックに至らない下落相場

今回のコロナショックは、2008年のリーマンショックに匹敵するパニック相場だったと言えますが、相場には時々大きな下落が訪れます。

パニックに至らない下落相場の例(1)チャイナショック

例えば、2015年、それまでバブルの様相を呈していた中国株が大暴落したことをきっかけに、チャイナショックが起きました。中国の人達がこぞって信用取引などで株を買っていた姿を記憶している方もいらっしゃるかもしれません。暴落は中国株に留まらず、世界に飛び火しました。この時期のS&P500指数と米国債10年利回りの動きを見てみましょう。

なお、債券価格が上がると利回りは低下し、債券価格が下がると利回りが上がるので、以下の表では、米国10年債の利回りを逆スケール(下に行くほど高くなり、上に行くほど低くなる)で表示することで、10年債の値動きを表しています。

上の表を見ると青い線で表された株価とオレンジの線で表された債券価格の動きがきれいに逆相関になっています。つまり、株式と債券に分散投資していれば、株式の下落分を債券の値上がりである程度補えたということになります。

 

パニックに至らない下落相場の例(2)クリスマスショック

同様に、2018年クリスマスに起きたクリスマスショックの時のチャートを見てみましょう。

このチャートを見ても、常時完全な逆相関というわけではありませんが、株価が大きく下落した局面では、株式と債券の価格は逆相関の動きを見せています。

このような下落相場は、大きな下落ではあるものの、歴史的に見れば「パニック」というほどではありません。こうした「パニックに至らない下落相場」においては、株式と債券の逆相関は崩れません。

 

パニック相場下での値動き

一方、パニック相場というのは、このような通常の下落相場とは異なり、市場が未曾有の危機に陥ったような時に発生します。

パニック相場の例(1)リーマンショック

例えば、2008年のリーマンショック時にも同様の動きがありました。

株式と債券が同時に下落し、逆相関が崩れているのが分かります。リーマンショックの際は「100年に一度の危機」とも騒がれ、市場が大混乱に陥りました。

パニックに至らない下落相場の例(2)コロナショック

そして、今回のコロナショック時の株式と債券の動きは以下のようになりました。

冒頭でもお伝えした通り、3月の新型コロナウィルス感染拡大による暴落の際にも、株式と債券の逆相関が崩れているのが分かります。

では、このような動きをもって「株式と債券の逆相関は崩れた」、「分散投資は意味がない」ということになるのでしょうか?

 

資産クラスごとの中長期の相関

確かに、パニック相場においては、短期的に株式と債券の相関が崩れますが、それはあくまでも一時的なものです。ここで、リーマンショック後の資産クラスごとのパフォーマンスを見てみましょう。

この図表を、最も安定した資産である「日本債券」と最も変動の大きい「外国株式」の動きを比較し、変化が分かりやすいように表示したものが下の図です。

中長期でみると、やはり株式と債券の動きは逆相関になっていることが見て取れます。

 

つまり、株式と債券の逆相関は、パニック時に一時的に崩れることはあるものの、長期的に見ればやはり逆相関が成り立っていると言えます。

 

まとめ

  • 株式と債券は、パニックに至らない下落相場においては逆相関の動きをする
  • パニック時には一時的に逆相関が崩れる
  • 中長期でみれば、やはり株式と債券の逆相関は成り立っている

今回のコロナショックのようなパニック相場下では、あらゆる資産が売られ、株式と債券の逆相関が崩れることもありますが、それが一時的なものであると知っていれば、動揺することなく、分散投資を継続していくことができます。パニック時に投資をやめてしまうのではなく、パニックから学び、良い経験としてこれからの投資に生かしていきたいですね。

 

※1図表は次のインデックスを用い、2008年~2019年までの期間の年次リターンをBIG TREEが計算しています。図表はシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではありません。

  資産名        参照インデックス
日本株式      TOPIX トピックス (配当込み)
外国株式      MSCI コクサイ・インデックス (KOKUSAI) (円ベース)
エマージング株式  MSCI エマージング・マーケット・インデックス (円ベース)
日本REIT     東証REIT指数 (配当込み)
外国REIT     S&P 先進国REIT指数 (除く日本) (円ベース)
日本債券      DBI 総合
外国債券      FTSE/シティグループ 世界国債インデックス 除く日本 (円ベース)
コモディティ      ロジャーズ国際商品指数 (RICI) (配当込み) (円ベース)

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