前回IFA業界の全体像や仕組みをお伝えしましたが、今回はIFAの雇用形態による違いに注目していきたいと思います。どのような働き方をするかはIFA本人にとっては非常に重要ですが、お客様にとってはどうでしょうか。お客様からは見えづらい雇用形態ですが、IFAを選ぶ際には意外と重要なポイントになってくるかもしれません。

2つの雇用形態

大手IFA法人に所属するIFAの雇用形態は大きく分けて二つあり、一つはIFA法人と業務委託契約を結び、完全歩合制で働くケース(IFAは個人事業主)、もう一つは正社員で固定給を受け取りながら働くケースです。さらに最近では、業務委託と正社員のハイブリッド型のIFA法人も出てきました。それぞれの特徴と選ぶ際のポイントを見ていきましょう。

①業務委託制をとるIFA法人

大手の一部と小規模IFA法人のほとんどは業務委託制をとっています。業務委託制を取っているIFA法人に所属するIFAは、個人事業主の集まりですから、営業の仕方は人それぞれで、IFA法人側は、IFAがより働きやすい環境を整えることに注力する傾向が強いです。IFA選びの際は、IFA法人ではなくIFA個人の得意分野や人となりを確認した方がよいでしょう。

ちなみに、業務委託で働く場合の報酬体系は以下のようになっています(イラストの報酬のサイズはイメージです。)。

【図1】IFAの業務委託報酬の仕組み(出所:BIG TREEにて作成)

業務委託制をとるIFA法人では、所属IFAに一定の「在籍料」を課す法人も少なくありません。在籍料がかかる場合は、その分IFA法人からIFAに支払われる報酬率(お客様負担分の一定割合がIFAの報酬となります。)が高いケースが多く、証券会社にいるよりも稼げる優秀な人材ほど好んで業務委託を選択するイメージもあります。その一方で、最近は、ただ稼ぎたいだけでコンプライアンス意識が低いIFAの存在も指摘され、厳しい監視の目が向けられております。お客様がIFA法人を見る際には、そのようなIFAを取り締まるコンプライアンス体制がとられているかなども確認してみるとよいでしょう。

個人事業主の集まり、というと一匹狼のようなイメージを持つ方も多いかもしれませんが、意外とIFA同士、横のつながりがあるIFA法人が多く、そうした環境を求めて、個人での開業ではなく組織に所属しているIFAも多いと思います。

選ぶポイント
●会社よりも、担当者個人を重視
●会社のコンプライアンス体制や幅広いサポート体制を確認

②正社員IFA制をとるIFA法人

元々IFAの働き方と言えば、業務委託が基本でしたが、大手IFA法人が育ってくる中で、正社員IFAを雇用する(できる)企業が出てきました。正社員としてIFAを雇用するのは、雇う側にとって非常にコストがかかりますので、小規模事業者で正社員制をとっているIFA法人はほとんどないと思います。所属IFAが全員正社員のIFA法人は、会社として均質のサービスを提供することを重視していると言えます。また、会社として強い経営理念や経営方針、専門分野を持ち、それを共有できるIFAを増やしたいと考えているケースが多いように感じます。例えば、一人の優秀なIFAがいたとして、多くの人がそのIFAに相談したいと考えたとします。しかし、一人が担当できる顧客数には上限があります。そこで、より多くの顧客に自身が考える最高のサービスを提供したいと考えた時、IFA法人として正社員IFAを雇い、自分と同じサービスを提供できる体制を整えるという選択をするわけです。また、証券営業時代の不満などから、最初から「自分が考える最高の金融機関を作りたい」という理念をもって創業しているケースもあります。そのような場合、個々人が自由に活動する業務委託ではなく、「正社員」として雇用することで統率が取れ、トップの思い描くサービスを提供しやすくなります。業務委託のIFA法人がフラットな横のつながりの組織とすると、正社員型はトップダウンの縦のつながりの強い組織の傾向があります。

IFAが全員正社員のIFA法人を選ぶ際は、担当者個人ではなく、社長の考え方や会社としての経営方針等が重要となります。社員教育や研修制度等も充実していたり、チームコンサルティング制度(担当者一人で完結するのではなく、チームでより良い提案内容等を相談する制度)を採用したりしているケースがほとんどですので、担当者による差異は少なくなるよう工夫されています。また、このタイプのIFA法人は、自社の理念に合ったオリジナル商品を開発しているケースも多いですから、その商品に投資をしたいと思えるかという視点で選ぶのもよいでしょう。

選ぶポイント
●担当者個人ではなく、会社としての経営方針等を確認
●会社のオリジナル商品の内容をよく確認し、投資したい商品かを確かめる

③正社員と業務委託のハイブリット型

さらに第三のパターンとして、正社員と業務委託のIFAの両方を採用しているIFA法人もあります。窓口に来たお客様対応は正社員、その他は業務委託のIFA法人、と部門をはっきり分けて共存しているIFA法人もあれば、同じような環境の中で正社員と業務委託の社員が混在しているという法人もあるようです。混在しているケースですと、業務委託の働き方に近く、正社員については、会社の方針で営業するというよりは、それぞれの営業活動を会社がサポートする、という形を取っているようです。こうしたIFA法人は、多様な働き方を提供し、IFAとして働く人を増やしたいという意向を持っているように思います。

選ぶポイント
●①の業務委託型と②の全IFA正社員型、どちらに近いかを確認し、それぞれのポイントに準じてチェック

まとめ

雇用形態によるIFA法人の違いを見てきましたが、いかがでしたか?

過去には、業務委託契約で完全歩合制でも稼げる人だけがIFAという働き方を選択するという世界でしたが、「正社員」という働き方が出てきたことにより、より多くの人にIFAへの道が開かれ始めています。ずば抜けて優秀な営業マンでなくても、家族がいて安定が必要な人でもこれからはIFAになれるかもしれないのです。「正社員」という働き方により、これまでIFAへの転職に踏み切れなかった人がIFAになることで、業界の規模も飛躍的に大きくなるかもしれません。しかし、IFA法人が既存の金融機関並みの規模になってきた時、既存金融機関とは異なる理想的な金融機関となれているかはこれから試されてきます。自分にとって最良の提案をしてくれそうなのはどんなIFAなのか、雇用形態という切り口から考えるヒントになれば幸いです。

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