前回、IFAの雇用形態による違いをお伝えしましたが、今回はIFA法人の規模による違いに注目してみたいと思います。最近メディアで見かけることも多くなった大手IFA法人と小規模のIFA法人ではどのような違いがあるのでしょうか。

大手IFA法人

どのIFA法人も初めは小規模からスタートしています。そこから同じ志のIFAが集まって次第に大きくなったり、マーケティング戦略が成功し、集客に対し所属IFAでは足りなくなってIFA(多くは正社員)を増員して大きくなったりしたケースなど、大手になるまでの道筋は色々ですが、大手としての全体的な傾向を見ていきましょう。

大手IFA法人の規模

IFA法人には小規模業者が多いことは前々回お伝えしました。そんな中で、大手の代表例として今年IFA法人で初めて上場を果たした株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルを挙げましたが、同社には2021年6月現在204名のIFAが在籍しているそうです。これは所属IFA数では最大級であり、それ以外のIFA法人ですと数十名のIFAが在籍していれば大手と呼べる規模で、100名に近づいてきている大手もあるといったサイズ感かと思います(2021年11月現在)。全国に支店を置いていても、数名で支店を構成しているケースもありますので、大手の金融機関に比べると規模は全く違います。それでも、IFAの全体数は着々と増えてきていますので、数年後には全くサイズ感が変わっている可能性もあります。今後もIFA法人は拡大し、将来的には上場するIFA法人も出てくるでしょう。

大手IFA法人のメリット

お客様から見て、大手であることのメリットとしては、次のようなことが挙げられます。

  • 組織がしっかりしているので安心

大手はそれなりにスタッフやお客様の数も多く、安心感はあるでしょう。前出の株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルのように、上場している場合であれば、厳しい上場審査も通っているわけですから、さらに安心感は大きいと思われます。

  • 充実したサポート体制

大手はIFA以外の事務系スタッフも多く在籍し、自社で充実したコールセンターやバックオフィス機能を備えている法人が多くなっているため、プラットフォーマーのインフラに頼らずにお客様がストレスなく取引できる環境を提供しています。また、所属IFAも事務作業などのサポートを受けることでお客様に向き合う時間を取れたり、自己研鑽に励む余裕もできるでしょう。

  • 総合的サービス

「IFA法人=資産運用のアドバイスをする」というイメージを超えて、総合金融を目指す大手も少なくありません。そうしたIFA法人では、ワンストップですべての金融サービスが受けられるように保険部門・不動産部門・銀行部門等を内包しているケースもあります。

このほか、これは大手に限りませんが、比較的オフィスが立派、立地も良いケースが多いといったメリットもあるかと思います。

大手IFA法人のデメリット

上記に挙げたようなメリットの中でも、独自のサービスやシステム、立派な設備などは裏を返せばそれだけのランニングコストがかかるとも言えますので、それを賄うだけの利益を上げ続けなければなりません。その意味で、利益追求に走るなど大手証券会社と同じ傾向が出ていないか注意してチェックする必要があるでしょう。

また、大手IFA法人で、特に正社員を雇用しているケースなどは、誰が担当しても同じレベルのサービスを提供できる代わりに、担当者が選べないこともあるかもしれません。IFAにオンリーワンのオーダーメイドサービスを求める方にとっては、均質なサービス、というのはメリットに感じられないこともあるでしょう。

小規模IFA法人

では、小規模(個人も含む)IFA法人の特徴やメリット・デメリットはどんな点でしょうか。

小規模IFA法人で心配なこと

そもそもがよく分からないIFAという職種ですから、「なんとなく大手だと安心」ということで大手を選ぶ人も多いでしょう。一般的に小規模業者だと心配と思われがちな点を一つずつ見てみましょう。

  • 怪しい業者でないか心配

大手のようにセミナーは高級ホテルで、面談は受付や応接室が完備された立派なオフィスビル、となれば、それだけでなんとなく安心ですが、名前も聞いたことのない会社だと少し不安になるかもしれません。そんな時は必ず資格を確認しましょう。以前のコラム「IFA法人がつぶれたらどうなる?!」に詳しく書いていますが、金融庁のHPに金融商品仲介業登録をしている業者の一覧が公表されていますので、まずはこちらに掲載があるかを必ず確認しましょう。
【金融商品仲介業者登録一覧】
https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/chuukai.pdf

  • サービスが劣るのでは?

大手にあるような様々なサービスに魅力を感じる方も多いと思います。例えば、ファンドラップなどのオリジナル商品、投信分析や運用提案書といったものです。しかし、小規模業者でも、プラットフォーマーである証券会社のリソースを使うことができますので、オリジナルではないというだけで大手法人と遜色ないサービスを提供することは可能です。さすがにオリジナル商品を開発するとなると相当の費用が掛かるので小規模業者には難しいかと思いますが、IFAが組んだポートフォリオで同程度のリターンを出すことは不可能ではありません。むしろオーダーメイド感はそちらの方が高いでしょう。予めプランが用意されているような商品というのは、誰でもある程度のレベルの提案ができるように作られているものですから、ベテランIFAにとっては必要ないケースもあります(一流のタクシードライバーにナビが必要ないように…。)。そうしたものに縛られずに営業したい、ということであえて大手に所属しない選択をしているIFAも小規模IFA法人にはいると思います。

  • 総合力で劣るのでは?

大手であればワンストップですべての金融相談ができるところもあります。小規模IFA法人では、社内にすべての機能を備えるのは無理なので、外部の専門家と連携して専門分野以外のニーズに応えているケースが多いようです。例えば、資産運用以外の案件が出てきた場合には「その点については、提携している〇〇(弁護士や税理士等)を紹介しましょう」といった形で紹介し、連携してサポートします。基本的に小規模IFA法人では、大手が社内に持っているような様々なインフラをアウトソーシングで補い、自社では資産運用業務に特化している場合がほとんどです。

小規模IFA法人を選ぶメリット

では、小規模IFA法人を選ぶメリットは何でしょうか。

一つは、少数精鋭である、ということです。少人数であればこそ、理念の共有度合いも高く、個々の能力も高い傾向があります。当然個人で開業している場合は自分の理念に従って思う通りの提案ができるわけですが、複数のIFAが集まるIFA法人の場合、構成員が増えてくると意思疎通が難しくなり、一貫性が薄くなってくる面はあるかと思います。組織としても規模を大きくする過程で多様な人材を集めようとして理念や能力にばらつきが出てくることもあるでしょう。それを補って均質なサービスを提供するために社員教育やチームコンサルティング等の仕組みがあるわけです。しかし、小規模IFA法人の場合は、組織が小さい分、理念の異なる人や独立して採算をとれる能力のない人を採用する余裕はありません。そのため、結果的には大手よりむしろ、所属員全員が一定レベルのサービスを提供できると言えるかもしれません。

二つ目は、小さい組織だからこそ情報共有や助け合いが自然にできることです。取り立てて「チームコンサルティング」を標榜していなくても、日常的に相談したり、知恵を出し合ったりできる環境である場合が多いです。

三つめは、会社の代表またはそれに近いIFAに直接担当してもらえることです。大手になるとセミナー講師を務めた社長は集客担当、実際に顧客担当するのは若手、ということもあるかもしれませんが、小規模IFA法人ですと直接担当してもらえることが多いです。

こうしたメリットは総じて、距離感が近いことから来るものと言えるかもしれません。IFAとお客様の距離感もそうですし、IFA同士も同様です。海外では、医者・弁護士・ファイナンシャルアドバイザーを人生に必要なパートナーとして並べて言われることがありますが、その中で日本で身近なのは医者くらいかと思いますが、かかりつけの町のお医者さんに行くように気軽に利用できる距離感、というのが小規模IFA法人のメリットではないでしょうか。

ただし、これはあくまでも傾向であり、小規模であっても超富裕層に特化した専門性の高いサービスを提供しているIFA法人もあることを付け加えておきます。

まとめ

IFA法人の規模という切り口で見てきましたが、いかがでしたか?

IFA選びの際に覚えておいてほしいこととして、最終的には「人」が大切であるということです。どこに所属していたとしても、自分の担当者は1人であり、その1人と信頼関係を築いていけそうかが何より重要です。信頼関係がないとアドバイスを素直に聞くことができず、運用にも支障をきたすかもしれませんし、運用がストレスになってしまうかもしれません。まず「人」ありきで、「この人に担当してほしい」と思えること、その次に、所属先はその人の良さを最大限生かす環境か、という視点で選ぶと良いと思います。「担当者は良いのだけど、会社の方針が合わない」では、独立・中立のアドバイザーであるIFAを選ぶ意味がありません。IFA法人のベクトルと所属IFAのベクトルとお客様のベクトルがぴたりと同じ方向を向いている状態が理想的です。そうした視点でIFA法人を選んでみてはいかがでしょうか。

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