今回は、iDeCo(個人型確定拠出年金)の金融機関選びのポイントを見ていきます。つみたてNISA以上に各社の取り組みに違いが見えるiDeCo。チェックポイントを確認し、長いお付き合いとなる金融機関をしっかりと選んでいきましょう。今回はコストについて詳しく見ていきたいと思います。

【第1回】今年こそ始めたい!iDeCoとつみたてNISA
【第2回】iDeCoやつみたてNISA、今から始めて大丈夫?~積立投資と相場の関係~
【第3回】iDeCoとつみたてNISA、金融機関選びのポイント【つみたてNISA編】
【第4回】つみたてNISAの金融機関選び~バランス型ファンドのチェックポイント・注意点
【第5回】つみたてNISA、金融機関ごとのメリット・デメリット

の続きです。

iDeCoを取り扱う金融機関

iDeCoは、「運営管理機関」と呼ばれる金融機関で口座を開設する必要があります。運営管理機関登録業者は、つみたてNISAの取扱金融機関よりは少ない220社(2020年12月2日現在)で、業態としては、銀行、証券会社、保険会社、投信会社、専業会社等になります。つみたてNISA取扱金融機関には含まれなかった保険会社や年金の運営管理に特化した専業会社が含まれてきます。

iDeCoにかかるコスト

iDeCoにかかるコストとしては、大きく分けると「事務手数料」と「運用にかかる手数料(信託報酬)」の二つがあります。運用にかかる手数料(信託報酬)は、投資する商品によって異なりますので、ここでは事務手数料について見ていきたいと思います。

比較のポイント

【図1】iDeCoにかかる主なコスト(BIG TREE作成)

iDeCoにかかるコストは上記【図1】の通りです。この中で、運用期間中に月額でかかってくるコストは運営管理機関によって異なるので重要です。以下に、主な運営管理機関の運用中の月額コストで運営管理機関によって差が出るコストをまとめました(他の運営管理機関に資産を移管したい場合にかかる移管手数料も示しています)。

【図2】主な運営管理機関の手数料(月額)一覧(2021年3月現在)(出所:特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会「iDeCoナビ」および各社HPよりBIG TREEにて作成)

無条件にコストが安いのはネット証券、イオン銀行、大和証券等

上記【図2】を見ると、無条件に月額手数料が最安(運営管理手数料が無料)となっているのがネット証券、イオン銀行、大和証券、三井住友銀行(みらいプロジェクトコース)です。その他の証券会社および大手都市銀行は、やや高めの手数料ですが、一定の条件を満たすと手数料が安くなるコースを用意しているケースが見られます。また、ここには載せておりませんが、その他の地銀などは条件設定もなく一律で運営管理手数料がかかるところがほとんどで、コストは高めです。

iDeCoにおける手数料の考え方

手数料は、定率ではなく定額ですので、拠出額が月5,000円でも50,000円でもかかる手数料は変わりません。仮に、月5,000円の拠出額に対し、(【図2】で最も高い)556円の手数料がかかるとすると、手数料率11.12%と、かなりのコスト割合となり、これを上回るリターンをあげるのは極めて難しいと言えます。

また、長期で運用する場合の累積手数料についても以下のような大きな差が出ます。

いかがでしょうか?このほかにさらに信託報酬もかかってきます。節税メリットが大きいので、手数料が小さく見えてしまう方も多いのですが、長期の積み立てにおいては後々大きな差となりますので、(少額を積み立てる場合は特に)手数料はシビアにチェックしていきましょう。

その他の金融機関は条件付き!条件設定を要チェック

また、コースを二つ設け、手数料に差をつけている金融機関が多いですが、その中身をよく見ると違いがあります。

◎掛金、資産額で線引きしているケース(野村證券、みずほ銀行、ソニー銀行など)
単純に、掛金が1万円以上、資産残高が一定額以上等、資産規模でコースを分け、ある程度の資金がないとコストが高くなる設定です。

◎商品数で区別しているケース(三菱UFJ銀行・三菱UFJ信託銀行)
三菱UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行の「ライトコース」と「標準コース」は選べる商品本数が異なります。ライトコースでは商品本数を10本に絞ってシンプルなラインナップとする一方で、標準コースでは32本の充実したラインナップを揃えて差をつけています。ただ、ライトコースの方でも口座管理料は有料で最低手数料にはなりませんので、大手都市銀行で最低手数料で取引したい場合は、これらの銀行は対象外となってしまいます。

◎テーマで区別しているケース(三井住友銀行)
三井住友銀行の「みらいプロジェクトコース」は上記2ケースとはかなり色合いの違う区別をしています。「iDeCo×社会貢献」というテーマで、以下のような特徴を打ち出しています。

  • つみたて投資を通じて社会に貢献することができるESG投資をはじめ、ビッグデータ・AI等、先進的な商品を選定しています。
  • 利用者数に応じて三井住友銀行が全額を負担し「困っている子どもたち」を対象に寄付を行います。
    (出所:三井住友銀行HPより)

理念としては素晴らしいのですが、取扱商品がほぼテーマ型のアクティブファンドで占められており、初心者には理解が難しいものも多く、商品の性質上、コストも高いものが多くなっています。今は魅力的なテーマですが、投資テーマは時代と共に変わっていくものなので、長期で運用するiDeCoの投資先としては継続性にやや不安があります。商品選びについては、次回コラムもご覧いただき、注意して選択する必要があります。

まとめ

今回は各運営管理機関のコストに注目して見てきました。iDeCoの手数料は少額投資の場合は特に影響が大きいものです。「どうしても〇〇銀行でiDeCoをしたい!」といったこだわりがなければ、なるべく安いコストの運営管理機関を選ぶのが賢明です。次回取り上げる、各社の商品ラインアップと合わせて、納得のいく金融機関選びをして行きましょう。

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iDeCoのご注意事項
投資信託は、主に国内外の株式や債券等を投資対象としています。投資信託の基準価額は、組み入れた株式や債券等の値動き、為替相場の変動等により上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。
投資信託は、個別の投資信託毎にご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なります。ファンド・オブ・ファンズの場合は、他のファンドを投資対象としており、投資対象ファンドにおける所定の信託報酬を含めてお客様が実質的に負担する信託報酬を算出しております(投資対象ファンドの変更等により、変動することがあります)。
ご投資にあたっては、商品概要や目論見書(目論見書補完書面)をよくお読みください。
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