前回、J-REITファンドが、J-REIT個別の利回りよりも高い分配金利回りを出している背景には、投資信託の分配金のしくみがあることをお伝えしました。

今回は、J-REITファンド残高トップ2(2020年7月20日時点)の「J-REIT・リサーチ・オープン」と「ダイワJ-REITオープン」を例に取り、具体的に分配金の中身を見ていきましょう。

収益を超えて支払われる分配金の中身

分配金のうち、分配準備積立金と収益調整金から出している部分がどれくらいあるのかは、運用報告書等で確認することができます(残念ながら、マンスリー・レポートなどでは載っていないことも多いです。)。

上記【図1】は、「J-REIT・リサーチ・オープン」の運用報告書の、分配金について記載された箇所です。これを見ると、2019年10月中旬以降の第174期と第175期(赤網掛け部分)に、当期の収益以外(つまり分配準備積立金と収益調整金)から分配金を出していることが分かります。

同じく、「ダイワJ-REITオープン」の運用報告書にも分配原資の内訳について記載があります(以下【図2】参照)。こちらも2019年10月中旬以降の決算期(赤網掛け部分)において当期の収益以外からの分配を行っています。この頃から、それまで右肩上がりだったJ-REIT相場が横ばいとなっているからでしょう。

「当期の収益以外」とは、「分配準備積立金」と「収益調整金」のことですが、さらにその内訳も知りたいところかと思います。

ダイワJ-REITオープンの運用報告書に分かりやすく記載されていました。

これをみると、第187期の時点では、収益調整金からの分配は行っていないものの、分配準備積立金の取り崩しが5期連続で行われ、残高が徐々に減ってきていることが見て取れます。このペースで行くと、相場が急回復しないかぎり、収益調整金から分配を行うか、分配金の額を減額するかの判断を早々に迫られるであろうことは想像に難くありません。

ちなみに、以下の【図4】の「J-REIT・リサーチ・オープン」の直近の運用報告書を見ると、2019年12月17日の決算日においては、まだ分配準備積立金に余裕がある((D)分配準備積立金額と(F)期末残存口数から計算すると、1万口当り1,214円)ことが見て取れます。このことから、同ファンドについては当面分配金が減額される可能性は低いのではないでしょうか。

分配金を下げづらい事情

そもそもこのように、当期の収益を上回る分配金を出している理由は何なのでしょうか?根底には、投資家の「分配金が高い=良いファンド」「分配金が下がる=運用成績が悪い」という誤った認識があるように思います。

「J-REIT・リサーチ・オープン」は2010年7月から10年にわたって現在の65円の分配を継続しており、「ダイワJ-REITオープン」も、2015年5月から5年もの間、80円という高分配を続けています。相場が好調で分配準備積立金が積み上がってきたことから分配金の増額に踏み切ったのでしょうが、その背景にもおそらく「分配金が高い=良いファンド」という投資家の認識があり、同種のファンド間の分配金競争のようなものもあったのでしょう。

そして、一度引き上げた分配金を下げるとなると、投資家の失望を招き、ともすると解約が増える可能性などもある、ということで、慎重にならざるを得ません。これが、組み入れ銘柄の分配金収益を大きく上回る分配金を出し続けている大きな理由ではないでしょうか。

まとめ

今回は、J-REITファンドの純資産残高トップの2銘柄の分配金について詳しく見てきましたが、いかがでしたか?
このように見てきますと、特に定期分配型の投信運用においては、運用そのものだけでなく、分配政策という点でもセンスが求められると言えます。つまり、投資家からの高配当への期待にうまく応えながらも、過剰な期待に押されることなく、長期にわたって維持していける分配金を設定する、というセンスです。
同時に投資家サイドとしては、そろそろ分配金や基準価額で判断するのは終わりにして、シャープレシオやベンチマークとの比較から運用成績を判断し、コストや分配金の中身まで注目して購入判断ができる賢い投資家になっていきたいですね。

次回は、色々なJ-REIT投資法をご紹介していきます。

 

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