iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAを始めてみよう!と思った時、まず大切なのが金融機関選びです。お近くの銀行や地元の信金などあちこちでポスターを見かけるかもしれません。「どこでも同じだろう」と思って安易に口座を作るのはちょっと待ってください。実は、選ぶ金融機関によってかなり違いがあるのです。今回は、iDeCoやつみたてNISAの口座を開設する金融機関の選び方のお話です。

【第1回】今年こそ始めたい!iDeCoとつみたてNISA
【第2回】iDeCoやつみたてNISA、今から始めて大丈夫?~積立投資と相場の関係~
の続きです。

iDeCoもつみたてNISAも金融機関を変更するのは大変

iDeCoとつみたてNISAに共通して言えることですが、どちらも、口座は一つしか作れません。そして、口座開設後に別の金融機関に口座を移したいとなると手続きが大変です。

つみたてNISAの場合は、その年に一度でも取引を行ってしまうと、その年は別の金融機関では口座開設できません。また、他の金融機関での口座開設には、新規口座の開設手続きに加え、移管元口座の廃止手続きが必要となり、かなり手間がかかります。さらに、つみたてNISA口座内の投資信託等を他の金融機関のつみたてNISA口座に移管することはできないため、売却するか、元の金融機関で引き続き管理することとなり、その場合、管理の手間も増えます(このことはNISA口座も同様です)。

iDeCoの場合は、いつでも移管はできるのですが、移管のための手数料がかかるケースが多いことと、保有資産を一旦すべて売却して、新たな口座で再度投資をし直すことになりますので、やはり頻繁な口座移管はお勧めできません。また移管に数か月を要するケースも多く、その間運用もできなくなります。

このように、iDeCo・つみたてNISA共に、金融機関の変更には多大な労力がかかりますので、最初にしっかりと金融機関選びを行い、なるべく変更のないようにしたいものです。

ここからは、つみたてNISA、iDeCoそれぞれの金融機関選びのポイントを見ていきましょう。

つみたてNISAの金融機関選びのポイント

つみたてNISAの取扱金融機関はかなり幅広く、2020年12月時点で566社あります。これはiDeCoの220社(2020年12月2日現在)と比べると倍以上であり、より身近な制度であることが分かります。大きく分けると主に証券系(ネット・対面)と銀行系(大手都市銀行・信託銀行・地銀・信金・信組・農協・労金)、その他投信会社でも取り扱いがあります。

取扱商品数

金融機関を選ぶポイントとして、一番大きいのが「取扱商品数」です。そもそもつみたてNISAは、金融庁が「長期・積立・分散」に適した投資信託の条件※を定め、世の中に6000本近くあるファンドの中から、193本(2020年12月23日現在)まで投資対象を絞り込んでくれています。
※金融庁が定めるつみたてNISAの対象商品の条件(抜粋)
・販売手数料が0円(ノーロード)で、信託報酬も低い商品
・頻繁に分配金が支払われない商品
(さらに詳しく知りたい方は、金融庁「つみたてNISAについて」(平成29年6月)をご覧ください。)

しかし、気を付けなければいけないのは、どこの金融機関でもすべてのファンドを購入できるわけではないということです。以下は、主要な金融機関のつみたてNISA取扱商品数の一覧です。


※オンライントレードのみ
【図1】つみたてNISA取扱商品数の比較(カッコ内はすべての投資信託取扱本数)
出所:各社HPよりBIG TREEにて作成(2020年1月19日現在)

つみたてNISA対象商品の取扱い数は、ネット証券が圧倒的に多くなっています(SMBC日興証券は、大手証券の中では群を抜いていますが、オンライントレードのみの取扱いですので、実態としては、対面というよりネット証券の分類と考えた方がよいでしょう)。ネット証券以外では、商品数が二桁あればかなり良い方という状態です。

商品数が多いということは、自分にぴったりと合ったポートフォリオを組みやすいということです。商品数が極端に少ない場合、その商品に自分が合わせることになり、ストレスを抱えながらの投資となってしまいます。せっかくのつみたてNISA制度ですから、ぜひ、自分に合った運用のできる金融機関を選びたいものです。

取扱商品の内容

それでは、取扱商品数がただ多ければよいのでしょうか。特に投資初心者の中には、商品数が多すぎて選べないという方もいるでしょう。正直なところ、金融庁の基準を満たしていると言っても、商品は玉石混交で、運用成績やコストも精査する必要があります。金融知識のない方にとっては、ある程度候補が絞られている方が失敗がないかもしれません。そこで、限られた品揃えの中から選ぶ際のポイントも見ていきましょう。

株式インデックスファンドのチェックポイント

まず、株式インデックスファンドで運用したい場合のチェックポイントは次の3つです。

  • 投資したい資産クラスのファンドを取り扱っているか
  • コスト(信託報酬)は安いか
  • 純資産残高は十分か

品揃えの少ない金融機関ですと、国内株、海外株各1~2本程度の品揃えということもあります。新興国株に投資したい、全世界株式に投資したい、といった明確な希望がある場合には、その資産クラスのファンドを取り扱っているか確認しましょう。

次に、コストをチェックします。インデックスファンドについては、コスト(信託報酬)の低いものが揃っている印象ですが、例えば日経平均株価に連動するインデックスファンドで見ると、0.15~0.55%までといったように、手数料率にもわずかながら幅がありますので、長期で運用することを考えるとコストはより安い方が良いでしょう(0.4%の違いでも20年運用すれば8%の差が出ます)。

さらに、コストが安ければいいというわけではなく、純資産残高にも注意する必要があります。極端に残高の少ないファンドですと、限られた資産での分散投資も難しく、将来償還になってしまったりするリスクも考えられますので、将来にわたって安定的に運用を継続してくれそうな、残高の多いファンドを選ぶ必要があります。アクティブファンドを人気で選ぶのはお勧めしませんが、インデックスファンドについては、多くの人が買っているファンドを選ぶのが無難と言えます。

まとめますと、株式インデックスファンドの品揃えとしては、低コストで純資産残高も十分な(メジャーな)インデックスファンドを各資産クラスにバランスよく取り揃えてあれば合格点と言えます。シンプルに株式で長期積立投資ができればいい、という方にとっては、国内株・先進国株・(できれば)新興国株にそれぞれ1本ずつ低コストなインデックスファンドが用意されていれば十分という考え方もあるでしょう。

次回は、バランス型ファンドのチェックポイントについてお伝えしていきます。

まとめ

  • iDeCoもつみたてNISAも金融機関を変更するのは大変
  • どこの金融機関でもすべてのつみたてNISA対象ファンドを買えるわけではない
  • つみたてNISAの金融機関選びのポイントは「商品数」とその内容
  • 株式インデックスファンドは、対象資産クラスとコスト・残高で選ぼう

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つみたてNISA のご注意事項

つみたてNISA の口座開設は、金融機関を変更した場合を除き、1 人につき1 口座に限られ、複数の金融機関にはお申し込みいただけません。金融機関の変更により、複数の金融機関でつみたてNISA の口座を開設されたことになる場合でも、各年において1 つの口座でしかお取引いただけません。
また、つみたてNISA の口座内に保有されている商品を他の金融機関に移管することもできません。なお、金融機関を変更される年分の勘定にて、既に金融商品をお買付されていた場合、その年分について金融機関を変更することはできません。
NISA・つみたてNISA は選択制であり同一年に両方の適用を受けることはできません。
NISA・つみたてNISA で取扱商品は異なります。あらかじめ所属金融商品取引業者のWEB サイト等にてご確認いただきますようお願いいたします。
つみたてNISA でのお取引は積立契約に基づく定期かつ継続的な方法による買付に限られます。
※その他NISA・つみたてNISA に関するご注意事項の詳細は所属金融商品取引業者のWEB サイトにてご確認ください。

 

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