当コラムでは株式の売買における、いわゆる「あるある」的な事象を紹介していきます。
これらは筆者が証券会社での営業を10数年経験し、1000人以上のお客様と取引をしていただいたなかで得た経験と、自らが株式売買において失敗を繰り返してきた経験に基づくものであり、当コラムをご覧いただいている方々の今後の投資における一助となれば幸いです。
<過去のコラムはこちら>
株式投資コラム①『損小利大』・『損大利小』あなたはどっち!?(前編)
株式投資コラム②『損小利大』・『損大利小』あなたはどっち!?(後編)
株式投資コラム③ファンダ派?テクニカル派?あなたはどっち?(前編)
株式投資コラム④ファンダ派?テクニカル派?あなたはどっち?(後編)
株式投資コラム⑤順張りトレードのメリットとデメリット
株式投資コラム⑥逆張りトレードのメリットとデメリット
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株式投資コラム第7回目は「テンバガー株の見つけ方」についてです。
「テンバガー」とは、元々は野球用語に由来するもので、「bagger(バガー)」は「~塁打」を意味しており、アメリカではホームランのことを「フォーバガー」と表現します。
「テンバガー」は1試合で10塁打という驚異的な数字を上げることを意味し、株式業界では株価が10倍に上昇した(または上昇しそうな)銘柄のことを意味します。
意外と身近なテンバガー
投資家であれば誰もが夢見るテンバガー株ですが、過去にテンバガーを達成した株式の中には意外と身近な!?銘柄もあります。筆者が個人的に身近に感じる過去のテンバガー銘柄を挙げてみます。(株価は分割等の修正考慮後の株価で記載)
・3053 ペッパーフードサービス
(2017年1月に600円→10月には8000円と約13.3倍を達成)
「ペッパーランチ」や「いきなりステーキ」に頻繁ではありませんが、たまに行きます。
・3765 ガンホー・オンライン・エンターテイメント
(2013年1月に90円→5月には1600円と約17.7倍を達成)
「パズドラ」で有名なゲーム会社。筆者はパズドラブームに乗れませんでした・・。
・8202 ラオックス
(2014年8月に500円→2015年7月には5500円と11倍を達成)
元々は家電量販店だが、2015年当時は中国人観光客による「爆買い」ブームの恩恵を受け急騰。昨年、閉店となり話題になったラオックス銀座店に2015年頃に筆者も訪れましたが、お客様のほとんどが中国の方でした。
株価10倍までの期間はマチマチ
前述の3銘柄はテンバガーを達成するまでに1年以内と比較的短期間で達成していますが、『安値→高値で10倍達成ならテンバガー!』という条件であれば、最短では『1日』で達成した銘柄もありますし、10年や20年かけてテンバガーを達成した銘柄もあります。
ちなみに『1日』で10倍になった銘柄ですが今は上場廃止となっている9898サハダイヤモンドです。2015年11月26日に上場廃止の噂が流れ、安値は1円まで急落。翌日には寄付の値段が11円で始まり、1日で11倍となりました。
当時は、「まさにダイヤモンド!」と言われたりもしましたが、結果的には上場廃止となっております。
約10年かけて10倍を達成した銘柄で有名な企業といえば9984ソフトバンクグループが挙げられます。2009年の安値が1103円、2018年の9月に高値11500円を付け、10倍を達成しています。同社は1994年に上場後、1997年の11月→2000年2月には株価は『100倍』を達成、ITバブル崩壊後の2002年11月→2005年12月の期間でも株価19倍を達成している「テンバガーの常連」とも言えそうです。
テンバガーになる銘柄の傾向とは
前述したサハダイヤモンドのような「投機的」に10倍になった銘柄ではなく、企業分析や業界分析を行ってテンバガー候補の株を発掘したいものです。
テンバガー候補になる銘柄の傾向としては以下のようなものがあります。
- 時価総額が300億円以下の中小型株
- 上場から10年以内
- 旬のテーマや話題性のある企業
- 業績の急拡大が予想される
- 創業家が経営するオーナー企業
- 創業家(資産管理会社含む)が筆頭株主
- 低い株価で推移している低位株
- 国策に沿った事業を展開している
- M&Aで事業拡大している
上記の条件はテンバガーを達成した銘柄すべてに共通するものではありませんが、ご自身で企業分析をする際に参考にしていただくと良いと思います。
そうは言っても、2019年5月31日時点での上場銘柄数は約3600社であり、1社1社企業分析を行うのは膨大な時間がかかってしまいますので、まずは「スクリーニング」で対象企業を絞り込んでいきましょう。
「株式 スクリーニング」で検索していただければ便利なスクリーニングサイトがありますし、証券会社に口座をお持ちであればログイン後にスクリーニングサービスを利用できる会社もあります。
ご自身が使いやすいと感じるスクリーニングサイトでまずは絞り込んでみましょう!
株は売り時が難しい
『株式は買う時よりも売る時のほうが難しい』とよく言われます。筆者自身もそう感じています。株式売却タイミングの考え方ついては、次回のコラムで取り上げます。
当コラムでお伝えしたいことは、『テンバガーを達成するには「確固たる信念」が必要である』ということです。
100万円で買った株が次のような値動きをした時のご自身の心理状態を想像してみてください。(投資できる資金が100万円の投資家をイメージ)
100万円(企業分析もしっかりしたし、テンバガーを期待!)
↓
150万円(予想どおりに上昇してきた)
↓
180万円(自分は株に向いてるかも!?こんなに増えるなんて、すごい)
↓
150万円(下がってきたけど、まだまだ大丈夫)
↓
130万円(あれ?ピークよりも利益が50万円も減ってる・・・)
↓
110万円(ヤバい、もうほとんど利益がなくなってしまった)
↓
100万円(もうダメだ、売ろう)
↓
150万円(売ったら上がってきてしまった。下がったらまた買おう)
↓
200万円(ここで買って、また下がったらどうしよう)
↓
1000万円(10倍になる)まで何度も上下を繰り返す(買えずに見てるだけ)
筆者はこのような体験を何度もしてきました。
実際に投資した銘柄がテンバガーを達成したこともありますが、途中で売却してしまい、その果実は享受できておりません。
投資した銘柄がテンバガーを達成するまでホールドし続けるには、『2倍になっても3倍になっても売らない』という信念をずっと持ち続けることができる精神力が必要です。
『買った後に一切株価を見ない』という方法もありますが・・・。
テンバガー株の見つけ方 まとめ
- 10倍になる銘柄は意外と身近にも存在する
- 10倍株の傾向を掴み、スクリーニングで絞り込む
- スクリーニングでは絞れない(現在の数字では判断できない)テーマに沿った企業や今話題の技術などをもった今後伸びそうな企業にもアンテナを張る
- ボロ株と言われる値段の株式は上場廃止のリスクがあることを理解する
- 10倍になるまでは保有し続けるという「確固たる信念」をもつ