当コラムでは株式の売買における、いわゆる「あるある」的な事象を紹介していきます。
これらは筆者が証券会社での営業を10数年経験し、1000人以上のお客様と取引をしていただいたなかで得た経験と、自らが株式売買において失敗を繰り返してきた経験に基づくものであり、当コラムをご覧いただいている方々の今後の投資における一助となれば幸いです。
<過去のコラムはこちら>
株式投資コラム①『損小利大』・『損大利小』あなたはどっち!?(前編)
株式投資コラム②『損小利大』・『損大利小』あなたはどっち!?(後編)
株式投資コラム③ファンダ派?テクニカル派?あなたはどっち?(前編)
株式投資コラム④ファンダ派?テクニカル派?あなたはどっち?(後編)
株式投資コラム⑤順張りトレードのメリットとデメリット
株式投資コラム⑥逆張りトレードのメリットとデメリット
株式投信コラム⑦テンバガー株の見つけ方
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株式投資コラム第8回目は「株式売却のタイミング」についてです。
よく、「株は買い時よりも、売り時のほうが難しい」と言われます。
株式投資歴10年以上の筆者もこの意見には賛同します。
なぜ、売り時のほうが難しいと感じるのか?
心理的な部分も含めて考えていきたいと思います。
買値は1つ、売値は3つ
1000円で買った株があるとします。買値は1000円の1つですが、売値は3つ選べます。
(ナンピン買いやピラミッディング等、複数回にわたって買う手法を除く)
①1001円以上で売却(利食い・利益確定)
②1000円で売却(同値撤退・引き分け)
③999円以下で売却(損切り・ロスカット)
選択肢が3つある時点で買い時よりも売り時のほうが3倍難しいと言えるかもしれません。
多くの投資家は①の「利益確定」という行動は心理的にも取りやすいと感じるはずです。
②の「同値撤退」については、買った後の値動きにもよりますが心理状態としては「いったんキャッシュポジションにしておきたいという方が多いでしょう。③の「ロスカット」については、なかなかすぐに決心がつかない方が多いかもしれません。
当コラムの第1回でもお伝えしたように、「人は、自らに有利な場面ではリスクを避けて、自らに不利な場面ではリスクをとる傾向にある」ということが関係していると言えそうです。
売却時と売却後の心理状況
マイルールを決めて株式の売却を行わないと、売却時や売却後に大きく心が揺れます。
(マイルールに関しては後述)
投資経験の長短や勉強期間の長短、内容の濃淡によって感じる差はあると思いますが、筆者は以下のような経験をしてきました。
「利食い・利益確定」
<売却時>
・利食い千人力だ!とにかく利益で売っておこう
・評価損から評価益になったから1円でもプラスで売れればOK
・この後、なんとなく下がりそうだから売っておくか(安心したい)
・短時間(短期間)でこの利益なら十分満足
<売却後>
・売却した値段よりも下がっていれば、「よし、狙い通り!次はいつ買おうか」
・売却した値段から上がっていくのを見て、「もう少し我慢して持っていれば良かった」「売却した値段あたりまで下がってきたらまた買おう」
・・・など。
「損切り・ロスカット」
<売却時>
・このくらいのマイナスであれば次のトレードで取り返せる
・いったんキャッシュポジションにしておいて冷静になろう
・もうこれ以上含み損が増えていくのは耐えられない
・悔しいけど、仕方がない
<売却後>
・売却した値段よりも下がっていれば、「売っておいて良かった。どこかで反転するだろうから反転ポイントを探して、また買おう」
・売却した値段よりも上がってきたら、「なんでロスカットしてしまったんだ!持っていれば良かった」「自分は投資に向いていない」
・・・など。
マイルールで売却タイミングを決めておく
売却時や売却後に心理状況が揺れないために、「買付時に売却タイミングをマイルールで決めておく」ことが重要です。買った後ではなく、「買付時」です。
売買時にマイルール通りの行動ができるようになれば、株式投資においてトータルで利益を残せる可能性が高くなるかもしれません。
例えば、以下のようなルールを定めておくのも選択肢に入ります。
- ロスカット値と利益確定値を決めておく(OCO注文を出しておく)
- 保有期間を決めておく(デイトレなら当日、スイングなら最大2週間など)
- 一度発注した注文を取り消さない
- マイルールを破らない
マイルールを設定し、それを厳格に守ることで強いメンタルを鍛えましょう。
何度もロスカットになることもあるかもしれません。
ロスカットしてからプラス圏まで戻ってくることもあるかもしれません。
ロスカットしてから株価が戻ってくる経験を何度もすると、「ロスカットしないほうがいいんじゃないか?」と思ってしまいます。
それでも、マイルール通りに売却できるか?
株式投資はご自身のメンタルとの戦いかもしれません。
株式売却のタイミング まとめ
- 個人差はあるが、買い時よりも売り時のほうが難しいと感じる人が多い
- 売却ルールを決めていなければ、売却時や売却後に心理的に揺れてしまう(売却を躊躇してしまう)
- マイルールを設定して、売却タイミングを決めておく