投資信託(投信)を購入して分散投資を始めよう!と思ったものの、いざ購入しようと思っても商品がたくさんあり過ぎて決められない、興味を持った投信の概要などを見てもよく分からない!という方も多いと思います。

本コラムでは、投信を選ぶ際に知っておきたい基礎知識や商品購入の際のチェックポイントについてお伝えしていきます。

これまでのコラムはこちら↓
投信選びの基礎知識①ファンドの投資対象は?
投信選びの基礎知識②インデックスファンドとアクティブファンド
投信選びの基礎知識③投資信託の手数料(前編)
投信選びの基礎知識④投資信託の手数料(後編)

第5回目は、為替ヘッジについて取り上げます。

気になった投資信託に「為替ヘッジありコース」と「為替ヘッジなしコース」が選択できるケースを見かけたことはありませんか?どちらを選べばよいのか迷われる方も多いと思います。今回は、為替ヘッジとは何か、そのメリット・デメリットなどをお伝えしていきたいと思います。

為替リスク

海外の資産に投資を行う場合、必ず為替リスクが発生します。為替リスクとは、円と外貨を交換する際に、為替相場の変動により、円換算した資産価値が変動するリスクのことを意味します。外貨預金などを利用して円高の時に外貨を買って、円安になったら売って利益を出そうと考える方も多いのでイメージしやすいかと思います。思惑通り、円高で買って円安で売却できれば、為替差益が発生し、逆にもっと円高になってしまえば、為替差損が発生します。このような変動があることを「為替リスクがある」と言います。

例えば、外国株に投資する場合、上記イメージのように、株式の価格変動リスクに加え、為替リスクも乗ってくるので、よりリスク(振れ幅)が高くなります。

しかも、世界的に株価が暴落するような局面では、安全資産と言われる円が買われて円高になる傾向があり、株式と為替の両方で大きな損失が出ることもよくあります。3月のコロナ・ショックで株価が大暴落した局面でも、ドル円は直近安値の112円台から、一時的に102円を割り込む水準まで円高が進み、米国株を保有していた投資家は円ベースで大きな損失を被りました。

また、安定的な運用を目指して外国債券に投資しているにもかかわらず、為替リスクで値動きが大きくなってしまっては元も子もありません。

こうした為替による損失を避けるために使われるのが為替ヘッジです。

為替ヘッジとは

「ヘッジ」は、「避ける」という意味の言葉で、為替ヘッジは、為替リスクを「避ける」ための手法です。
為替ヘッジには「為替予約」という先物取引を利用します。現在の時点で将来の為替レートを予約することで、為替の変動リスクを回避しています。

為替ヘッジのデメリット

このように、為替リスクを抑えることのできる為替ヘッジですが、デメリットもあります。

デメリットその1:ヘッジコスト

為替ヘッジにはいわゆる「ヘッジコスト」というものがかかります。ヘッジコストは通常2国間の金利差分となります。例えば、金利がほぼ0の日本円から、金利2%の国の通貨に投資し、為替ヘッジする場合、約2%のコストがかかることになります。ですから、高金利の国に投資しながら為替ヘッジを行うと、ヘッジコストも高くなり、リターンもヘッジコスト分小さくなってしまう点に注意が必要です。

ヘッジプレミアム

反対に金利の高い国の通貨から低い国の通貨に対してヘッジをかける場合には、金利差分の「ヘッジプレミアム」を受け取れる場合があります。残念ながら、超低金利が続く日本からの為替ヘッジでプレミアムを受け取れるケースはほとんどありませんが、知識として覚えておくとよいでしょう。

デメリットその2:リスクは減らせるがリターンも取れない

為替ヘッジを行うと、為替の変動リスクは抑えられますが、投資した後に円安が進んだ場合には、為替によるリターンを取り損なうこともあります。

どっちがいいの?

では、為替ヘッジありとなし、どちらを選べばいいのでしょうか?

まず、為替ヘッジありを選んだ方が良い場合としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • リスク許容度が低く、為替リスクを取れない場合
  • 安定的に運用したい場合
  • 今後円高が進むと予想している場合

次に、為替ヘッジなしを選んだ方が良い場合としては…

  • リスク許容度が高く、為替によるリターンも狙っていきたい場合
  • 新興国など、投資先の成長に期待して投資する場合
  • 金利差が大きく、ヘッジコストが高くなってしまう場合
  • 今後円安になっていくと予想している場合
  • 為替がどちらに動くかは分からないが、とにかくコストはかけたくない場合
  • 先物などの手法を使わず、シンプルな投資をしたい場合

などが考えられるでしょう。

コロナ・ショックにより、FRBが3月にゼロ金利政策を復活したことにより、ヘッジコストは、リーマン・ショック後以来の低水準になっています。さらに、不況のために株・債券とも不安定な動きがまだ続く可能性があるので、現在は為替ヘッジありで運用するのに適した環境と言えるかもしれません。

投信のコース変更

投信の為替ヘッジあり/なしのコース変更は、実は簡単にできることが多いです。ですから、ヘッジコストが安く、相場も不安定な今はヘッジありを選択しておき、今後景気が上向いて世界的に金利が上がってくる局面で日本と海外の金利差が広がってくるようなら、その時点でコース変更を検討するのもよいでしょう。

まとめ

為替ヘッジについて見てきましたが、いかがでしたか?

ヘッジあり・なし、どちらが優れているということはなく、投資家の属性や投資環境でどちらを選べばいいのかは変わってきます。すでに外貨建ての資産に投資する投資信託を保有している場合は、保有している投資信託がヘッジありかなしか、コース変更はできるのかなど、この機会に確認しておくのもよいでしょう。また、これから投資するという方は、機動的にヘッジあり・なしを変更できるかどうか、確認してから購入するとよいでしょう。

 

【ご注意事項】
投資信託は、主に国内外の株式や債券等を投資対象としています。投資信託の基準価額は、組み入れた株式や債券等の値動き、為替相場の変動等により上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。
投資信託は、個別の投資信託毎にご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なります。ファンド・オブ・ファンズの場合は、他のファンドを投資対象としており、投資対象ファンドにおける所定の信託報酬を含めてお客様が実質的に負担する信託報酬を算出しております(投資対象ファンドの変更等により、変動することがあります)。
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