投資信託(投信)を購入して分散投資を始めよう!と思ったものの、いざ購入しようと思っても商品がたくさんあり過ぎて決められない、興味を持った投信の概要などを見てもよく分からない!という方も多いと思います。

本コラムでは、投信を選ぶ際に知っておきたい基礎知識や商品購入の際のチェックポイントについてお伝えしていきます。

これまでのコラムはこちら↓
投信選びの基礎知識①ファンドの投資対象は?
投信選びの基礎知識②インデックスファンドとアクティブファンド
投信選びの基礎知識③投資信託の手数料(前編)
投信選びの基礎知識④投資信託の手数料(後編)
投信選びの基礎知識⑤為替ヘッジありとなし、どっちがいいの?
投信選びの基礎知識⑥決算頻度と分配金

ここまでの投信選びの基礎知識シリーズでは、投資対象や手数料といった投信のつくりについて見てきました。最後は、購入にあたって、その投信のこれまでの運用成績などをどのように評価すればよいかのチェックポイントを2回にわたって見ていきたいと思います。

投信の情報開示いろいろ

投資信託の情報を得るための資料としては、購入時に交付される「目論見書」、決算期ごとに作成される「運用報告書」、毎月HP等で開示される「月次レポート」などがあります。また、最近はHPなどで積極的に情報開示をしている運用会社も多く、動画などで分かりやすく説明しているサイトもあります。

その中でも情報が一番コンパクトにまとまっているのが「月次レポート」です。月次レポート(「運用報告書」、「マンスリーレポート」など各社呼び方は様々)は、タイムリーに運用状況を報告するために毎月発行されるレポートで、HPなどから誰でも閲覧することができます。今回は、この月次レポートのチェックポイントを説明していきたいと思います。

月次レポートで分かること

月次レポートはファンドごとに書式や掲載内容が異なりますが、主に以下のような項目が含まれます。

  1. 基準価額・純資産総額推移のグラフ
    基準価額(・分配金込みの累積投資額)・純資産総額の推移がグラフで掲載されています。詳細後述。
  2. 期間別騰落率
    過去1か月・3か月・6か月・1年…等、期間毎の騰落率(リターン)などが分かります。
  3. ファンドマネージャーのコメント
    その月の運用状況について、ファンドマネージャー(運用担当者)が説明しています。相場全体の状況今後の見通しなどについても語られていることがあり、どうして下がっているのか、など値動きの理由も分かります。
  4. 基準価額の変動要因(株式、為替、分配金等)
    基準価額変動の理由を要素ごとに分解して示しているレポートも多く見受けられます。ここを見ると、「株価は上がったけど、為替で損失が出たんだな」などが分かるようになっています。
  5. 資産の組入状況・組入上位銘柄
    複数の資産に分散投資している場合であれば、各資産への投資比率(株30%、債券30%、不動産30%、現金10%、など)、株式ファンドであれば組入上位銘柄のリストなどが載っており、そのファンドが具体的に何に投資しているのかがよくイメージできます。

特にチェックすべきポイント

このように情報満載の月次レポートですが、その中でも特にチェックしてほしいのが基準価額と純資産総額の推移です。

【図1】フィデリティ USハイ・イールド・ファンドの運用実績の推移(2020年5月月次レポートより抜粋)

ほとんどの投信で、「運用実績の推移」などとして、上の図のような設定来のチャートを載せており、投資家が一番注目するのも、このチャートかと思います。

チェックポイント1:基準価額の推移

まず注目してほしいのが、基準価額の推移です。

①ベンチマーク(参考指数)と比べてどうか?

チェックする際のポイントとしては、上がっているかどうかだけではなく、ベンチマーク(この図では、赤の点線で示されています)と比べて勝っているか負けているかを確認しましょう。株式で運用するアクティブファンドなどでは、ベンチマークを上回る運用を目指すのがそもそもの大前提となりますので、必ずチェックする投資家も多いでしょうが、毎月分配型のような投信の場合でもインデックスファンドでない限りは必ずチェックすることをお勧めします。中にはベンチマークを載せていないレポートなどもありますが、載っていない理由は何なのか(勝っていれば当然載せるはずですので)、投資家としては厳しくチェックしていきたいところです。

なお、図1で取り上げたファンドの値動きはベンチマークより悪いですが、以前「毎月分配型投信のどこが悪いのか?」のコラムでお伝えしたように、毎月分配型投信はその設計上運用効率が悪くなってしまうので、上記ファンドに限らず、総じてベンチマークよりは劣る値動きとなっていることを付け加えておきます。

②累積投資額(分配金再投資額)の考え方

また、図1では、基準価額(細い青線)と累積投資額(太い青線)という2本の線があります。分配金を出すタイプの投信では、分配金を再投資して複利で運用した場合のリターンを示すために、このように分配金込みの累積投資額のチャートを掲載していることが多いのですが、ここで注意点があります。このチャートの下に注意書きとして「累積投資額は、ファンド設定時に10,000円でスタートしてからの収益分配金を再投資した実績評価額です。ただし、購入時手数料および収益分配金にかかる税金は考慮していません。」とあります。実際に分配金を再投資する場合、(利益からの分配であれば)税金が引かれ、残りの金額が再投資されます(分配金再投資コースであれば購入時手数料は無料)。

例えば、毎月30円の分配金が出ている投資信託があるとします。この投資信託を運用開始時に100万口購入し、毎回普通分配金(利益の中から出る分配金)を受け取ったとしましょう。そうすると、毎回の分配金は3000円、そこから税金の20.315%(609)が差し引かれ、残りの2,391円で買える口数を購入していくことになります。翌月には、再投資で増えた口数に応じた分配金が支払われ、またそこから20.315%の税金が差し引かれて再投資されます。これをずっと繰り返していくのが現実の運用なのですが、月次レポートに示される「累積投資額」では、この税金分を引かずに計算しているということになります。毎月の分配金の約2割かつそれが複利で計算されていくわけですから10年、20年と運用されていく間にその差はかなり大きくなっていくでしょう。

つまり、実際に設定時からファンドを保有し、分配金を再投資していた投資家のリターンと、累積投資額で表されたリターンは一致しないということです。

税金が引かれるかどうかは購入した価格によるので、同じ月の分配金でも投資家毎に引かれる場合と引かれない場合があり、一律には示せません。そのような事情もあって税金は考慮しないという前提になっているのでしょうが、結果的には複利効果が最大限に働くシミュレーションになってしまっており、現実に設定来でこれだけのリターンを得ている投資家は存在しません。全期間iDeCoやつみたてNISAなどの非課税口座で運用していれば今後はあり得るかもしれませんが…。

 

次回は、もう一つのチェックポイントである「純資産残高の推移」について見ていきます。

(つづく)

【ご注意事項】
投資信託は、主に国内外の株式や債券等を投資対象としています。投資信託の基準価額は、組み入れた株式や債券等の値動き、為替相場の変動等により上下しますので、これにより投資元本を割り込むおそれがあります。
投資信託は、個別の投資信託毎にご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容や性質が異なります。ファンド・オブ・ファンズの場合は、他のファンドを投資対象としており、投資対象ファンドにおける所定の信託報酬を含めてお客様が実質的に負担する信託報酬を算出しております(投資対象ファンドの変更等により、変動することがあります)。
ご投資にあたっては、商品概要や目論見書をよくお読みください。
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